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Euro 7:ブレーキ粉塵規制への対策、回生ブレーキの扱いが今後の焦点、摩擦材変更には課題[FOURIN通信]

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Euro 7:ブレーキ粉塵規制への対策、回生ブレーキの扱いが今後の焦点、摩擦材変更には課題[FOURIN通信]

パワートレインの技術革新が進み粒子状物質の排出量は激減している一方で、新たな課題として浮上しているのがブレーキ粉塵。これをいかに抑えるか、試行錯誤が続いている。
(PHOTO:Shutterstock)

[FOURIN通信]
1980年創業、自動車産業調査のパイオニア・FOURIN社が刊行する自動車調査月報より、今後の自動車業界を読み解く特別寄稿。毎月末日更新。
全レポートはこちら:https://www.fourin.jp/

道路交通から排出される粒子状物質(PM/PN)は、排ガス規制の強化にあわせてエンジンの燃焼や後処理の改善が進んだ結果、ここ20年ほどで劇的に少なくなった。反面、これまで規制の対象外であったブレーキやタイヤなどの非排気粉塵の割合が増している。

非排気粉塵の削減にいち早く乗り出したのはEUである。2023年11月に欧州議会で成立した次期排ガス規制:Euro 7では、タイヤとブレーキからの非排気粉塵が規制対象に加えられた。ブレーキ粉塵として粒子状物質(PM10)を計測し、小型自動車の場合、非電動車7mg/km以下、電動車3mg/km以下を求めている。

Euro 7のブレーキ粉塵は、国際調和基準(WLTP)のUN GTR No.24に準拠した手法で計測される。実際の運転状況を可能な限り再現したラボで、車両からブレーキを切り離して計測が行われる。

EU Joint Research Centre(JRC)などの研究者が、UN GTR No.24の手法で複数のブレーキシステムの粉塵を計測したところ、PMの排出量が最も少ないのはドラム式であり、ディスク式はそれより3~18倍多く排出することがわかった。近年、ほとんどの自動車メーカーは制動性に優れるディスク式を採用しているが、粉塵規制強化によりドラム式が再び増加することも考えられる。

JRCの調査によれば、摩擦材の違いもPMの排出量を左右する。日本や北米で主流の有機系ノンアスベスト材(NAO)は粉塵が少なく、欧州で主流の低鋼材(LS)の半分以下である。しかし、NAOは制動性でLSに劣る。欧州には制動重視の業界標準としてAMSブレーキテストが別にあり、NAOへの転換の妨げとなっている。

パッドコーティングや粉塵捕集装置も検討されているが高コストである。回生ブレーキは解決策の一つだが、現行GTR No.24ではほぼ考慮されておらず、今後のGTR改訂での回生ブレーキの扱いが注目される。

今後の排ガス規制ではブレーキ粉塵も対象

著者
東 尚史:FOURIN編集部

株式会社 FOURIN (フォーイン)は自動車産業専門の調査研究会社として世界各国の自動車産業に関する各種調査報告書を出版しております。

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