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TECHNOLOGY

EVにエンジン音は必要か?“物足りなさ”を補う疑似サウンド技術

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EVにエンジン音は必要か?“物足りなさ”を補う疑似サウンド技術

EVシフトが進み、普及が増えるにつれてICE搭載車は確実に減少していく。エンジンではなくモーターで動くEVはほぼ無音に近く、エンジン車に慣れ親しんだドライバーの中には“物足りない”と感じる人もいるだろう。そんなニーズに着目し、EVであえてエンジン音を表現する動きが広がりつつある。走行時、車内に疑似エンジン音を発することで、EVでもガソリン車やディーゼル車のような「気持ちの良い走り」を再現することが狙いだ。

疑似エンジン音を奏でるサウンドデバイス

ヤマハ発動機の「αlive(アライブ)」は“五感を目覚めさせる新しいモビリティ体験”を技術や製品によって実現していくコンセプトブランド。ヤマハらしい“息づかいを感じるテクノロジー”を提供価値とし、電動モーターユニット、パフォーマンスダンパー、ショックアブソーバーなどの製品を展開している。

その中で音に特化した技術が、2021年に新開発された「αlive AD(アライブ アコースティックデザイン)」。同社の音響技術を活かし、エンジン音のないEVにも「走りの高揚感」を求めるドライバーに向けて、新しい体験を提供する。

音響技術で「走りの高揚感」を演出

αlive ADは、エモーショナルな走行体験を演出する車室内空間用のサウンドデバイス。音響LSIを内蔵したコントロールユニットと専用のスピーカーにより、パワートレインの原音と、ヤマハ発動機のエンジン開発の知見を活かした独自の音源をチューニングして音を生成。車両のエンジン回転数やアクセル開度、車速、フリッピング、シフト位置と連動して生み出される音は、車種ごとの個性に反応し、エンジン車、EVともに自然な駆動感を演出する。

ドライバーのフィーリングとドライビングスタイルにシンクロし、エンジン車のランブル音からEV独特の高周波までリアルに再現するこのデバイスをEVに搭載することで、“なにか物足りない”というEVの静寂性に対する課題を解決し、ドライバーの欲求を満たしてくれるのだ。

ヤマハ発動機の「αlive AD」

失われていく「車らしさ」を埋めるもの

車メーカーも、走りに呼応して生成したエンジン音を車内のドライバーに届ける疑似サウンド技術「アクティブ・サウンド・コントロール」(ASC)に取り組んでいる。運転モードに応じてエンジン音や排気音を車内に再生したり、ドライバーの好みに合わせてサウンドをカスタマイズしたり、音で叶えうる限りの演出を模索しながら走りの楽しみを追求している。

各社がこうした車内の疑似サウンド技術に注目し出した背景には、「自動車の騒音規制を受けて走行音を抑える必要に迫られたから」という受動的な動機が大きく見える。だが、いま急速に進むEVシフトにより急速に失われていく「車らしさ」を埋めるものとして、αlive ADやASCのような疑似サウンド技術は重要な役割を担っていく可能性がある。

走行時にパワートレインが発する躍動的な加速サウンドは、ドライバーの感覚を研ぎ澄ませ、走りに没入させてくれる。車内に響くランブル音は、アクセルの開閉度などを把握するうえでも重要な要素だ。

こうしたこれまでのICE搭載車の技術に付帯する音やフィーリングがぽっかりと失われてしまうことにより、「EVなんて面白くない」と拒否反応を示すドライバーは少なくない。彼らがEVを選択するまでの意識・行動変容には時間を要する。

だが気候変動対策として、これまで享受していた体験が確実に無くなるのは時間の問題だ。今度はドライバーの方が、受動的な動機でもEVにシフトし、音による走行体験を享受していく時代が当たり前となるかもしれない。

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