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総重量25トンの大型トラックを転がしてみたら、軽自動車並みに簡単だった!UDトラックスの「クオン」が物流の2024年問題を救う? 【働くクルマを解剖する②】

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総重量25トンの大型トラックを転がしてみたら、軽自動車並みに簡単だった!UDトラックスの「クオン」が物流の2024年問題を救う? 【働くクルマを解剖する②】
働くクルマを紹介するシリーズの2回目は車両総重量25トンの大型トラック*に試乗した。(*試乗時は車両総重量20tになるようにウェイトを搭載)

先進運転支援システム(ADAS)や自動運転機能を搭載した大型トラックが、物流の2024年問題を解決する救世主になるか?

工事や輸送などに使われる車両を我々は毎日のように目にしているが、その構造や機能を詳しく知る機会はあまりない。そこで、このシリーズでは「働くクルマ」を紹介していく。前回の「ミニバックホー」に続き、今回は物流業界で活躍する大型トラックを取材した。

走る・曲がる・止まるといった自動車としての機能は、大型車両も基本的には乗用車と変わらない。大型トラックで特に印象的だったのは、意外にも、と言っては失礼かもしれないが"人に優しい"点だ。この記事では、そこにフォーカスを当てる。

日本の物流を支える大型トラック

大型トラックには、生コンクリートなどを運搬するミキサー、ガソリンなどの液体を運ぶローリー、土砂を積載するダンプなど用途に応じた様々なボディ形状がある。トラック本体(キャブ付きシャーシ)をUDトラックスのようなOEMが製造し、荷台部分は専門の架装メーカーが製作・取り付けを行うのが一般的だ。完成後に、トラックメーカー系のディーラーから顧客に納車されるケースが多い。

大型車両の荷台部分は専門の架装メーカーが製造する。

荷物の大量輸送に活躍するのが「バン型車」と呼ばれるトラックで、長距離貨物輸送などにも使われており物流を支える主役と言える。そうした大型トラックの中から、昨年秋にADASを強化し、運転者の負担軽減と安全性の向上を図ったUDトラックスの「Quon(クオン)」を取材した。

カーゴとトラクター

車両総重量25トン・最大積載量は15tのクオン「カーゴ(CG 8×4R)」と、重機や建築資材などの輸送時には、通常、連結車両総重量が約40t~50tとなる重量物輸送用のクオン「トラクター(GW 6×4T)」の2台が用意された。カーゴはいわゆる大型トラック。荷室の左右も跳ね上げ式にオープンすることで、積み下ろしが容易な「ウイングトラック」が多い。

トラクターは、荷物を積載した車輪付きの「トレーラー」(※)を牽引する連結装置を備えた専用車で、「トラクターヘッド」とも呼ばれる。一般には、このトラクターとトレーラーを合わせた状態でトレーラーと称されることが多い。(※trailer:英語で「引きずるもの」「あとに付いて行くもの」を意味する。)

どちらも車軸の数が乗用車と同じ2本の仕様から3軸や4軸などがあり、駆動輪の場所と数も用途に応じて選択できる。今回紹介するカーゴの「8×4」は8輪(4軸)車で、そのうち4輪が駆動することを意味する。トラクターは6×4とあるように、6輪のうち4輪にエンジンからの動力が伝達される。なお、大型車両の後軸には片側2本ずつタイヤが装着される場合が多いが、便宜上、真横から見た場合のタイヤの数×2で本数を表現する。

優しさを感じるクルマづくり

この2台には試乗が許された。一言で表現すると、「人に優しいクルマ」というのが実際に運転しての印象だ。ステアリング、トランスミッション、ドライバーモニターシステムなどに組み込まれたテクノロジーが、運転者の負担をできるだけ軽減するようサポートしてくれる。特にトラクターは昨年フルモデルチェンジしたばかりのフラッグシップモデルで、最新のADASによる安全性の高さと自動化のレベルは上級クラスの乗用車と遜色ないものだった。

こちらはカーゴの最新モデル。

運転者の仕事を肩代わりするアクティブステアリング

「UDアクティブステアリング」は、油圧式ステアリングギヤの上部に設置したモーターが各種センサーからの情報を集約したECUの指示でステアリングを制御する。速度や積み荷の重さ、路面状況などに応じ、走行方向とドライバーの意図を判断して適切なトルクを与えるという。

運転者の負担軽減に貢献するアクティブステアリング。
アクティブステアリングの要であるモーターユニット。

試乗車には積み荷が搭載されており車両総重量が20tとなっていたが、乗用車と変わらない軽い力でステアリングホイールを操作することができた。長時間にわたって長い距離を走行する場合、体力的な負担軽減に大きく貢献するだろう。

トラックの荷室には、荷物の代わりに重量のあるコンクリートの重りが搭載されていた。

筆者は年齢・体格的に筋力にはまったく自信がないが、荷台を含めると全長12メートル近いカーゴの車体を、転回時も乗用車と同じような感覚で運転が可能だった。スピードの上昇に応じ、適度な重さに変わるため、初めての大型トラックでもリラックスできた。

そのほか、路面の凹凸を乗り越えた際の振動やキックバックを自動補正する機能も備わっている。後退・右左折・転回後には自然な動きでニュートラル位置へ自動復帰したり、横風時にはシステムがステアリング補正を行ったりと、多くの場面でドライバーの仕事を肩代わりしてくれる。

エアーサスペンションで身体に優しいシート

アクティブステアリングと並んで注目したのが、安全性と快適性の両面に配慮されている運転席だ。ドライバーの腰を支えるランバーサポートと左右から保持するサイドサポート、シートの上下調節機能は全てエアーでコントロールされており、運転姿勢や身体の形状に合わせて繊細な調整ができる。

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