世界初の自動運転用オープンソースソフトウェア「Autoware」で自動運転技術を変えるティアフォー【AD/ADASの現状をおさらいする Vol. 2】
大規模で複雑なシステムが必要とされる自動運転技術の開発には、膨大な手間と時間が掛かる…。こうした現状に“風穴”をあけるべく、独特なアプローチで取り組んでいるのがTIER IV(ティアフォー)だ。そして、そこでカギとなる要素が、世界初の自動運転用オープンソースソフトウェア「Autoware」である
TEXT:髙橋一平(Ippey TAKAHASHI) PHOTO:MFi/TIER Ⅳ FIGURE:TIER Ⅳ
[2024.09.10]TIER IVの社名、Pilot.Auto/Edge.Auto/Web.Autoの表記を改めました
現在から遡ること数年前の2021年4月、東京の臨海副都心地域において自動運転車の公道試乗会が行なわれた。試乗に供されたのは、内閣府直轄の研究プロジェクト、SIP自動運転(SIP-adus)に参加する研究用車両の数々。多くは完成車メーカー(OEM)をはじめとした大手によるものであったが、そのなかでも印象的なまでに運転の制御がスムーズだったのが、今回紹介するTIER IV(ティアフォー)の手がけるトヨタJPN Taxiをベースとする車両だった。
飯田:モデルベースの予測制御を用いています。モノや他の車両があったら停まる、といった単純な制御ではなく、自車はもちろん、他の車両の軌道もモデルベースで予測していて、予測されるそれぞれの軌道線が交差すると判断されると、回避のための制御が入るというかたちです。乗員の乗り心地、違和感のなさも目指したところで、ジャーク(加加速度)を参照しながら制御している点も特徴のひとつです。
TIER IVの飯田氏はこのときの車両に用いられていた技術について、このように説明してくださった。スムーズな制御はソフトウェアによるところが大きいのだという。もちろん、自動運転車両らしく、この車両のルーフ上には全方位をカバーするLiDARが搭載されるほか、カメラをはじめ多くのセンサーが追加されるということで、こうしたハードウェア要素の影響も少なからずあるはずではあるのだが、そういったことを差し引いたとしても、注目すべきはやはりソフトウェアである。
というのも、この車両に実装されているそれは、「Autoware」と呼ばれる自動運転ソフトウェアをベースとしているのだが、このAutowareはオープンソースソフトウェア(OSS)であり、誰でもwebからダウンロードして使用することができるものなのだ。
もともとAutowareは、TIER IVの創業者である加藤真平博士が名古屋大学で准教授を務めていた際に、長崎大学、産業技術総合研究所と共同で開発したものであり、2015年にオープンソースのソフトウェアとして公開された。そして、このAutowareを軸にビジネスを展開しながら、自動運転技術の発展と普及を目指すべく設立されたのがTIER IVである。
オープンソースのソフトウェアというと、まず思い浮かぶのは、androidやLinuxといった、オペレーティングシステム(OS)だ。そのメリットについては、いまここであえて言うまでもないだろう。この点についてはAutowareも目的は同じだ。しかし、それら(androidやLinux)においていかにビジネスが成り立ち、また維持管理されているのかというと、曖昧な理解しかないという向きがほとんどだろう。もちろん、ところどころに“課金の仕組み”などが垣間見えるところもあるわけだが、それでも全体像となるとなかなか掴みづらい。