WirelessCarのICT基盤構築サービス、VWやMercedes-Benzなどがコネクテッドカーの実装に利用[FOURIN通信]
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1980年創業、自動車産業調査のパイオニア・FOURIN社が刊行する自動車調査月報より、今後の自動車業界を読み解く特別寄稿。毎月末日更新。
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数百~数千個のセンサを搭載するコネクテッドカーが生成する膨大な量のデータは、社会課題の解決、安全性とUX向上につながる車載アプリ(サービス・機能)の開発、新規事業の創出に活用できる。そのため、データドリブン企業への転換を図るOEMは、高級車などに限られているコネクテッドカーの普及に取り組んでいる。
つながる車の核となるコネクテッドカー基盤は、車の特性(長い製品寿命、高速移動)と予想される台数増加のため、長期にわたり安全で信頼性が高い接続性の確保、大規模データの蓄積・リアルタイム処理、スケーラビリティが求められる。このような複雑なシステムの構築には技術的に難しく、コストも高いという課題がある。
OEMによるコネクテッドカーの実装を支援するため、WirelessCarはAmazon Web Servicesの技術や長年の知見を活用し、スケーラブルで可用性に優れるコネクテッドカー基盤の構築や、UX(ユーザーエクスペリエンス:顧客体験)に優れた充電サービスアプリなどをモジュール式のソフトウェアソリューションとして提案している。
OEMはコネクテッドカー基盤とアプリを一括または分離採用できる。例えば、基盤を導入することで、リソースを大幅に節約できるため、アプリの差別化に注力できる。WirelessCarのサービスは既にフォルクスワーゲンなど13社のOEMに採用されており、同社は2024年11月以降、日本での事業展開を本格化する。
コネクテッドカーICT基盤の構築における課題
車はライフサイクルが長く、高速移動という特性があるため、コネクティビティの実現に不可欠なコネクテッドカーICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)基盤には、長期にわたり安全で高信頼性のコネクティビティの確保、大規模データの蓄積・リアルタイム処理が求められる。このようなシステムを実現するには、以下のような課題があり、システムの構築は複雑で高コストになる。
▶︎ 技術の変化:例えば、通信プロトコルについては、現在4G/LTEや5Gであるが、安全性を考慮し、常時接続型など次々と新しいものが提案されている。データ蓄積・処理技術、AIやインテリジェントアルゴリズムも同様である。新技術は実績が少なく、安定的に使用できるか不明なため、技術の選択には試行錯誤が伴う。
▶︎ データの変化:車の進化に伴いデータの種類が増加。
▶︎ クラウド:車両1,000万台からドライブレコーダーで仮に5分間データを集めると、データ収集量は約32PB(ペタバイト:テラバイトの1000倍)/年になり、クラウドの保存費だけで約10億円かかる。また、国・地域によって利用できるクラウドサービスやデータ仕様が異なるため、システムも変えなければならない。
▶︎ サイバーセキュリティ:インターネット業界標準の通信規格TCP/IPとEthernetの採用拡大により、サイバー攻撃の危険性が増大する。
▶︎ スケーラビリティ:コネクテッドカーの増加を考慮すると、システムを拡張できない場合、数年ごとにシステムの置き換えや、複数のシステムの混在などが起こる。これにより、システム運営とアプリ開発が複雑化する。