日本における自動運転開発や実装はどのように推進されていくのか、自動車メーカーの動向に触れ現在地を探る
日進月歩の成長を続ける自動運転業界。日本のホンダが自動運転レベル3の市販車を世界に先駆けて発売し、メルセデスもレベル3の提供を開始した。アメリカや中国ではレベル4の自動運転タクシーが街中を走行し始めている。
レベル3の搭載車種は2021時点の実績で100台、2025年には40万台、2030年には625万台まで規模が増えると矢野経済研究所は見込む。
また同社の調査報告によれば、レベル4の搭載車両数は2030年に約72万台に達すると予想している。
自動運転の実用化に向け世界が動き出している中、日本はどこまで進んでいるのだろうか。これまでの実証実験の事例や自動車メーカーの動向に触れ、現在地を探っていく。
目次
自家用車への本格導入は2027年以降、まずは移動サービスの自動運転の導入を進め、2025年度までに国内約50カ所の実証に取り組む
自動運転実用化に向けた開発が世界中で加速している。法規制も進み始め、今後数年のうちに世界各国でサービスインする見込みだ。
では日本の状況はどうだろうか。
2014年度から「官民ITS構想・ロードマップ」を策定し、早期実現に向けた計画のもと官民協働体制で事業を推し進められてきた。
同ロードマップは2024年6月に「モビリティ・ロードマップ2024」に名称を変更し、新たな指針を掲げている。
それによれば、2027年度以降に自家用車へ本格的に導入していくようだ。ただし、あくまでも現段階の指標となるため今後の動向によっては、実用化される時期は異なる。
現在はホンダがレベル3の市販車を発売しており大きな話題を呼んだが、実現しているのはホンダのみで他の自動車メーカーは実用化には至っておらず、レベル2+のハンズオフ機能にとどまる。
また政府主導で、移動サービスの自動運転の導入を進めており、2023年に福井県平寺町で自動運転レベル4の移動サービスを展開している。
日本政府は2025年度を目処に50カ所程度、2027年度までに100カ所以上の自動運転サービスの実証に取り組む考えだ。まだ大半が自動運転レベル2にとどまっているが、レベル4へ移行する取り組みが徐々に増加していくことが予想される。
2025年に向け、無人移動サービスを50カ所で実現するという政府目標のもと、民間各社の取り組みも徐々に熱気を帯びてきた。
自動運転レベル3に関する法整備は2020年4月に施行、レベル4は2023年4月に解禁、今後はレベル5に対応する法整備が求められる
これまで道路交通法では、人が運転することを前提に安全運転の義務が定められており、自動運転システムで自動車を走行させる際の規定は定められていなかった。
自動運転の実用化に向け、レベル3走行を可能とする改正道路交通法と改正道路運送車両が、それぞれ2020年4月に施行され公道走行が解禁された。
世界に目を向ければ、ほぼ同タイミングでドイツや韓国などがレベル3に関する法整備を完了している。
レベル4走行は「特定自動運行」と定義し、従来の「運転」と区別する内容を含んだ道路交通法の改正案が2022年の通常国会で可決され、2023年4月に施行されている。
同年5月には、福井県永平寺町で自動運転レベル4の移動サービスの展開を開始。
無人を前提としたモビリティが移動サービスを提供しているが、電磁誘導線に沿って自動運転を行う「誘導型」を採用。そのためWaymoやCruiseと同水準のレベル4とはまだ言えない状況だ。
世界に先駆けてレベル4に対応した法案が可決されたのは、2021年5月にドイツが実施している。
レベル5については、現在のところどの国も法整備が進んでいない状況だ。
日本では2027年に神奈川県横浜市で開催される「国際園芸博覧会」で、自動運転レベル5の実証実験の実施が計画されているようだがその実態は不確かだ。
ただ自動運転の実用化に向けて民間企業は開発を進め、政府も様々な取組みを行っている。
自動運転の実用化が進む中、自動運転関連の事故に関するニュースも見逃せない。
国内では自動運転レベル4の無人移動サービスが、2023年に接触事故を引き起こしている。怪我人はいなかったことが幸いで、運行が一時停止されるにとどまった。
日本では大惨事となる事故の報告はないものの、アメリカではGM傘下Cruiseの自動運転タクシーが、女性を下敷きにして引きずるという事故が2023年に発生している。
安全性の確保は自動運転を実現する上で、世論からすれば必須と言えるだろう。
日本自動車メーカーが取り組む自動運転技術の進化
世界初の自動運転レベル3を開発したホンダは、様々な地域で実証実験を繰り返し約1,000万通りもの膨大なシミュレーションを実施
繰り返しとなるがホンダは世界初の自動運転レベル3を搭載したモデル「LEGEND(レジェンド)」を2021年3月に発表し100台限定のリース形式で販売された。
運転中に目を離すことができる「アイズオフ」機能を実現する「Traffic Jam Pilot(トラフィックジャムパイロット)」を実装したモデルだ。
当モデルはLiDAR5基、ミリ波レーダー5基、カメラ2基、超音波ソナー12基を搭載し、自車周辺360度の状況を高精度で把握することができる。これら各種センサーとGNSS、高精度3次元地図を活用することで、レベル3を実現した。
レベル3開発に向け、実証実験車両で高速道路を地球30周以上に相当する約130万km走行した。収集したデータに基づいてシミュレーションを行う作業を繰り返し、約1,000万通りもの膨大なシミュレーションを実施したという。
実証実験は国内にとどまらず、中国や欧州、北米など様々な地域で行われた。
中国では、中国政府が定める自動運転技術推進企業である「百度(Baidu)」と、中国独自の地図及びその応用技術の共同研究を実施。
欧州での実証実験は、自動運転に対する受容性検証を目的とするHi Driveと呼ばれるコンソーシアムに参画し行われた。
北米では先端研究の拠点であるHRI(Honda Research Institute)USを主体に、AI技術の自動運転への活用について先進的研究を実施。