エンジンテクノロジー超基礎講座002|ボアピッチ:気筒直径(ボア)の中心間距離。エンジン設計はここから始まる
ボアピッチ(Bore Pitch)とは、隣り合うシリンダーの中心間の距離をいう。エンジン設計のスタート地点ともいえる数値である。「bore center distance」「cylinder spacing」と言ったりする。今回はこの「ボアピッチ」を解説する。【モーターファン・イラストレーテッド Vol.136より転載】
隣り合う気筒間にどれくらいの余裕を持たせるか。つまりボアピッチをどう設定するか。エンジン設計はここから始まることが多い。水平対向エンジンでは「メタルから設計が始まる」とも言われるが、ボアピッチをシリンダーボア(ピストンの直径と同義語)に対して大きくしすぎるとクランクシャフトが長くなる。現在では「シリンダーライナーの厚み×2プラスα」がボアピッチの相場だ。鋼製ライナー同士が接触しないギリギリの寸法である。
ただし、この設計ではボアを拡大して排気量を増やすことが難しい。排気量の増減はピストンストロークで調節することになる。また、ボアピッチはシリンダーブロックとシリンダーヘッドを締結するボルト穴の位置を大きく左右する。何本のボルトで留めるか、どの場所で留めるかという要件は1気筒あたりの最大燃焼圧力に左右され、充分な冷却を行なうための冷却水路設計からの影響も受ける。近年のディーゼルエンジンでは吸排気系の理想的な取り回しがボルト位置よりも優先される場合もある。要件は複雑だ。したがって、ボアピッチの決定はエンジンの素性を決定するといっても差し支えない。だからエンジン設計の「最初の一歩」なのである。