STと吉利汽車、SiCの長期供給契約を締結。共同研究ラボ設立でNEV移行促進
欧州の半導体メーカー・STマイクロエレクトロニクス(ST)と中国の自動車メーカー・吉利汽車は6月13日、SiC(炭化ケイ素)製品に関する既存の協力関係を加速させるため、SiCの長期供給契約を締結したと発表した。
吉利汽車は、2023年に合計168万台の自動車を販売しており、このうち、NEVの販売台数は48万台に達し、年間販売台数の28%を占めている。
STは、この複数年契約に基づき、吉利汽車の複数ブランドに対し、ミドルレンジからハイエンドのバッテリ電気自動車(BEV)向けにSiCパワー半導体を供給する。これにより、性能向上や充電の高速化、航続距離の延長を実現し、吉利汽車によるNEVへの転換戦略に貢献する。
さまざまな車載アプリケーションに関する長年の協力関係に基づき、吉利汽車とSTは共同研究ラボを設立。車載インフォテインメントやスマート・コックピット・システムといった自動車のE/E(電子/電気)アーキテクチャ、高度運転支援システム(ADAS)、NEVに関連する革新的なソリューションに関する情報交換および探究を目的とする。
吉利汽車は、STの第3世代SiC MOSFETをトラクション・インバータに採用している。トラクション・インバータは、電動パワートレインの主要コンポーネントで、SiC MOSFETによって効率を最大化できる。先進的なインバータ設計とSiCのような高効率パワー半導体の組み合わせは、EVの性能向上の鍵となるという。
STは、トラクション・インバータやOBC(オンボード・チャージャ)、DC-DCコンバータ、EV充電ステーション、電動コンプレッサなど、幅広いEVアプリケーションにSiC製品を提供し、NEVの性能および効率向上、航続距離の延長に大きく貢献している。2023年6月には、STと中国における化合物半導体市場のリーダーである三安光電は、重慶(中国)に200mm SiCウェハを使ったSiC製品を製造する合弁企業を設立すると発表。これにより、中国顧客のニーズへの対応を強化し、中国の主要自動車メーカー、産業機器メーカー、およびSiCのソリューション・プロバイダとの協力の拡大を通じて、中国における電動化を加速させていく。