パワートレーンには柔軟な多様性が必要だ
IAV[ドイツ]の展望と提案
再エネ発電だけで電力をまかなえる未来は、果たして本当にやって来るだろうか。IAVは「HEVは当分の間、必須である」との考え方から、HEVパワートレーンの研究開発を進める。そして「裕福な先進国だけがBEV化を進める危険性」も指摘する。
TEXT:牧野茂雄(Shigeo MAKINO)
FIGURE:IAV/Shell
上のグラフはCセグメントHEV(ハイブリッド・エレクトリック・ビークル)の燃費改善例である。トヨタ・カローラ、VW(フォルクスワーゲン)ゴルフといった量販車であり、このクラスの燃費改善は「面」としてエネルギー消費抑制に効く。IAVは「パワートレーンの多様性と効率の追求が重要。
BEV(バッテリー・エレクトリック・ビークル)は、使用状況によってはCO2を増やしてしまう危険性がある」と言う。HEVに使うICEの効率改善を進める理由はここにある。
IAVベルリン本社のマーク・ゼンス氏にWebインタビューを行なった。同社のパワートレーン責任者であり、世界各国のOEM(オリジナル・エクィップメント・マニュファクチャラー:自動車メーカーのこと)を飛び回っているという。
「欧州ではもうICEは長続きしないだろう。厳しいCO2規制下での判断としては正しい。しかしICEには多くの研究者が携わり、すでに140年間も生き続けてきた。パワー、効率、コストのバランスは素晴らしい。
唯一の問題は化石燃料を使うことだ。CN(カーボンニュートラル)燃料を使う手段がある。自動車という輸送システムの中でICE車、とくに純粋なICE車は確実に減ってゆく。しかしなくならない」
これがESP(エンジニアリング・サービス・プロバイダー)としてのIAVの立ち位置だ。いっぽう、欧州以外の地域についてはこう言う。
「Tank to Wheel(走行)ではBEVの効率は高いが、欧州ほど規制が厳しくない地域ではすべてを満たす解ではない。Well to Wheel(資源採掘から走行段階まで)ではなおさらだ」
HEVの場合、ベースとなるIECの改良は確実に燃費効果をもたらす。エネルギー効率45%のICEを使うと、パワートレーン全体の効率がアップする。上のグラフがそのシミュレーションである。2030年時点でのCO2排出目標に対しても有効だとIAVは言う。