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熱効率50%を射程に捉えたe-POWER向け次世代燃焼技術

量産エンジンへの実装を前提にタンブル流を精緻に作り込む

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熱効率50%を射程に捉えたe-POWER向け次世代燃焼技術

日産が開発を進めている次世代燃焼技術「STARC」において、熱効率50%の目処が立ったことが発表された。研究レベルであれば、すでに同様の成果も報告もあるが、日産のそれはあくまで量産を見据えたものである。

TEXT:髙橋一平(Ippey TAKAHASHI)
PHOTO:山上博也(Hiroya YAMAGAMI)
FIGURE:NISSAN

テストベッドに載る次世代e-POWER向け専用エンジンの試作機。排気量1.5ℓの3気筒で、クランク機構はリンクなどを持たないコンベンショナルなもの。シリンダーヘッドにはエキゾーストマニフォールドを内蔵、ターボチャージャーが直接取り付けられる。ボア・ストローク比は車載の都合も考慮した結果、1.25程度とされている。

 
強力なタンブル流に載せて点火プラグのアーク放電を伸長、火炎核を形成することで超希薄混合気を燃やし切る……。

2021年2月末、日産は次世代のe-POWER発電専用ガソリンエンジンにおいて、熱効率50%を実現する目処が立ったという発表を行なった。その核となるのは「STARC」(Strong Tumble and Appropriately stretched Robust ignition Channel)と名づけられた燃焼技術。

冒頭のくだりは、その名称にも示される同技術のもっとも特徴的な部分だが、筆者がこれを聞いて最初に連想したのは、2018年度までの5ヵ年にわたって行なわれた、内閣府直轄の研究プロジェクトSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)革新的燃焼技術において、ガソリン燃焼チームが用いていた手法である。

最終的に熱効率51.5%(ガソリン燃焼)という成果を得た同研究は産産学学連携で行なわれ、産の連合体であるAICE(自動車用内燃機関技術研究組合)を通して日産も参加していた。それだけに共通点があったとしても不思議ではないのだが、SIPのそれはあくまで学術的なアプローチによる研究であり、製品化を目的とした日産のSTARCとはスタンスが大きく異なる。

SIP革新的燃焼技術の成果発表からわずか2年で、自動車メーカーによる製品化に向けた動きがここまで具体的なかたちで出てくるとは、正直予想外だった。

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