水素を燃料とするエンジンにはどのようなメリットと課題があるのか
畑村博士が解説する基礎知識
水素燃焼エンジンへの注目度は昨年あたりから急速に高まってきた。しかしその歴史は古く、多くのメーカーやサプライヤーが開発を進めていた経緯がある。ここではまず、「水素を燃やす」ことに関しての基本的な利点と課題を解説する。
まとめ:世良耕太(Kota SERA)
PHOTO:MERCEDES-BENZ/BMW/MAZDA/YAMAHA/MFi
目次
研究開発は古くから行なわれており1970年代には実車走行試験もスタートしていた
水素エンジンは1970年代に開発が始まると、いったんは盛り上がったが、00年代半ばにぱったり研究がとまり、最近再び盛り上がりを見せている。武蔵工業大学の古浜庄一先生(故人)が74年に走らせたのが日本初の水素自動車で目的はオイル消費を調べるためだった。水素をエンジンで燃焼させると排ガス中のハイドロカーボンはすべてオイル由来になるからだ。その後CO2排出問題の解決手段として開発が進んだ。
70年代から80年代にかけてメルセデスやBMWが水素エンジンの開発に乗り出し、特にBMWは熱心で100台のBMW750hLを生産し走行実験を行なった。マツダは91年に水素ロータリーエンジンを開発。吸気が熱い燃焼室に触れないロータリーはバックファイヤ(吸気管燃焼)が起きにくい。02年にはフォードが高圧タンクを積んだ水素エンジン車を開発。武蔵工大で75年に作った水素自動車は液体水素を使っていた。その後、水素吸蔵合金を経て高圧水素を使うようになった。