自動運転の“レベル上げ”を目指すのは正しいか?日産プロパイロット2.0の立ち位置とこれから【AD/ADASの現状をおさらいする Vol. 12】
開発の進む自動運転技術の将来には期待したいが、それよりも実際に運転を支援してくれる現実のADASのほうがドライバーにとっては恩恵が大きい。日産が進めるADASであるプロパイロットは現在2.0が最新世代。登場当初からどのように進化しているのか、エンジニアに取材した。
TEXT:安藤 眞(Makoto ANDO) PHOTO&FIGURE:Nissan/ZF
進化した「プロパイロット 2.0」
国産車として初めて、特定条件下におけるハンズオフ運転を可能にしたのは、2019年に日産がV37型スカイラインに搭載して発売した“プロパイロット2.0”。その前身となったのが、2016年にセレナに搭載されたプロパイロットだ(ここでは便宜上、2.0と区別するために“1.0”と称する)。
1.0は、単眼カメラを使用して路面に引かれた白線や先行車両を捉え、全車速追従型アダプティブクルーズコントロールと、車線の中央走行を支援するレーンキープアシストを協調制御するもの。これが“複数の運転支援機能を同時に作動させる”という“自動運転レベル2”の定義に合致していた。
その後、前方の認識にミリ波レーダーを加えたり、カーナビゲーションの地図情報を取り込んで、ジャンクションのカーブなどで曲率に合わせた自動減速を行ない、本線以外でも運転支援機能を継続できるようにした“ナビリンク機能”を追加するなどの改良を実施している。ベーシックな1.0はシステム構成がシンプルで追加コストが抑えられるため、今や軽自動車を含む10モデルに搭載される。
その発展型である“プロパイロット2.0”は、自動運転のレベル分けでは1.0と同じ“レベル2”にあるが、機能的には大幅に進化しており、①同一車線内ハンズオフ走行、②先行車に追いついた際の追い越し支援&走行車線復帰支援機能、③車線変更支援機能、④ルート走行支援機能、を実現している(いずれも自動車専用道限定)。各機能については、日産のウェブサイト(※)や取扱説明書を参照いただくとして、これらの機能を実現するために、ハードウェアは1.0に対して大幅に複雑化している。