安全運転支援システムに“全方位”の対応を拡大していくHonda SENSING【AD/ADASの現状をおさらいする Vol. 14】
「AD/ADASの現状をおさらいする」特集の最後に、MotorFan illustrated 195号からHonda SENSINGに関する取材会の様子を抜粋して紹介する(情報は当時のもの)。
ホンダは2022年12月1日、安全運転支援システムに関する新たな発表を行なった。このタイミングに合わせて同社の栃木プルービンググラウンドで取材会を実施。安全に関する取り組みを解説し、合わせて次世代技術を搭載した開発車両を公開した。
TEXT:MFi PHOTO & FIGURE:HONDA/MFi
全方位安全運転支援システム「Honda SENSING 360」
取材会で公開されたのは、すでに多くの車両に搭載されているHonda SENSINGの機能をより高めた全方位安全運転支援システム「Honda SENSING 360(ホンダ センシング サンロクマル)」に関する詳細と次世代技術、2021年にレジェンドに搭載されてレベル3自動運転に対応したHonda SENSINGのフラッグシップである「Honda SENSING Elite(ホンダ センシング エリート)」のさらなる進化に向けての取り組みだった。
Honda SENSINGはすでに日米市場で99%、グローバルで86%の新車に搭載され、累計販売台数は1400万台を達成している。今回のタイミングで新たに市販車への搭載が正式に発表されたHonda SENSING 360は、レベル3自動運転に適合するトラフィックジャムパイロット(渋滞運転機能)を搭載したHonda SENSING Eliteの技術の研究開発で培われた知見を生かしたもの。
フロントカメラに加えてフロントと車両各コーナーに計5台のミリ波レーダーを装備し、360度センシングを実現するという基礎技術の発表は2021年に行なわれていた。車両周辺の死角をカバーし、交通事故の回避やドライバーの運転負荷軽減をサポートする全方位安全運転支援システムであり、2022年12月に中国で販売が開始されるCR-Vから展開を開始、日本でも2023年中に搭載モデルを発売する予定で、24年よりグローバルに順次、適用を拡大していくという。
ホンダの二輪・四輪が関与する交通事故死者ゼロを目指す
Honda SENSING 360の機能アップの目的は、交通事故死者ゼロに向けた重点領域での支援機能拡大にある。前方に加えて左右方向への検知能力を高めれば、交差点の右左折時などでの出合い頭の衝突を回避できる可能性が高まるのは明らかだ。
同様の検知機能を備えるADAS搭載車両は他社からも登場しているが、ホンダは創業者の安全への想いである「人名尊重」「積極安全」というビジョンを実現すべく、今後も積極的にこの分野での開発を推進していくと強調。安全機能面を統括する髙石エグゼクティブチーフエンジニアは同社の取り組み進捗を解説し、新安全目標として「2050年 全世界においてホンダの二輪・四輪が関与する交通事故死者ゼロを目指す」という野心的な目標を掲げた。
続いて登壇した玉川執行職はHonda SENSINGの進化と普及に関して説明。ADAS搭載車両の事故削減効果の推移を述べるとともに、ホンダならではの二輪四輪共存を実現する機能を備えたADASの早期普及への取り組みや、Honda SENSING 360を2030年に先進国で販売するすべてのモデルへ展開する目標などを発表している。