二輪車向けステレオカメラシステムがバイクの安全性能向上を加速する?|【AD/ADASの現状をおさらいする Vol. 13】
二輪車にも電子制御が浸透、より高度なものへと進化が続くなか先進運転支援システムの普及が静かに始まっている。自動車の後を追うかたちは他の電子制御システムと同様だが、二輪車におけるそれはよりシビアに安全と結びつくとあってターニングポイントにもなりうる大きな意義をもつ。バイクのADASについて、MotorFan illustrated 196号(2023年2月号)より抜粋して紹介する(情報は当時のもの)。
TEXT:髙橋一平(Ippey TAKAHASHI)
PHOTO&FIGURE:Hitachi Astemo/BOSCH/Kawasaki Motors
ボッシュの牙城を崩す国産ARAS
2022年11月、イタリアのミラノで開催された二輪車向けの国際展示会「EICMA(Esposizione Internazionale Ciclo Motociclo e Accessori)」。開催地にちなみ“ミラノショー”とも呼ばれるこの恒例イベントに日立Astemo(アステモ)のブースがあった。
かつての日立オートモティブに加え、二輪部品の老舗ブランドとしても広く知られるケーヒン(KEIHIN)、ショーワ(SHOWA)、そして日信(NISSIN)といったサプライヤーの統合により2021年に誕生した同社が展示していたのは、インジェクションシステムやサスペンション、そしてブレーキなど、二輪車のパフォーマンスに大きく関わる重要な構成部品の数々だが、とくに興味深かったのが、二輪車用として新たに開発された先進運転支援システム(ADAS)だ。
運転者をドライバーではなくライダー(Rider)と呼ぶ二輪車では、このADASをARAS(Advanced Rider Assistance Systems)とも呼ぶ。自動車用のそれと比べると、システムに許されるスペースや重量の制約が厳しく、また独特かつ複雑な制御が求められるなどのハードルが存在していたことから、実用化がワンテンポ遅れていた。だが、2021年にBMW、ドゥカティといった欧州勢が相次いで市販車に搭載し2022年には国産のカワサキもこれに続いている。
じつはこれら(現時点でADASを採用している二輪車)の背景には共通点が存在する。いずれも独ボッシュが開発した二輪車向けのADASソリューションを基としており、それぞれで構成やアレンジなどに若干の差はあるものの、システム的には同じものだと思って良い。つまり、日立Astemoの二輪用ADASは、この“一強体制”に対し初めて打ち込まれる楔になりうるわけである。