自動運転は人件費削減の手段にあらず。レベル2の自動運転バスによる地域交通の維持【AD/ADASの現状をおさらいする Vol. 6】
ソフトバンクから社内起業で誕生したBOLDLY株式会社は、持続可能な公共交通を社会実装することを目的に日本各地で精力的な取り組みを続けている。早期のサービスインを実現するために車両の選定や日本の法規に合わせた改造を行なうなど、これまでの歩みを佐治CEOに伺った。
TEXT:安藤 眞(Makoto ANDO) PHOTO:MFi FIGURE:BOLDLY
公共交通の自動化を進めるBOLDLY
ひと口に“自動運転”と言っても、自家用車と公共交通はまったく別のものと考えたほうが良い。法的に走行が許されている場所ならどこでも走る可能性がある前者に対し、走行エリアが限定できる後者のほうが、より実現性は高い。
その公共交通の自動運転化をリードする企業のひとつが、BOLDLY(ボードリー)株式会社。2020年9月には、京浜急行天空橋駅を中心とした大規模複合施設“HANEDA INNOVATION City”で“自動運転レベル2(以下同じ)”の定常運行を開始したのに加え、同年11月からは、茨城県境町で路線バスとして運行を開始。2021年12月には北海道上士幌町で冬季の運行を開始するなど、導入する自治体を着実に拡大している。
現在、定常運行用に使用している車両は、仏NAVYA社の“ARMA”。ショッピングモールやテーマパークなど、閉鎖空間で“レベル4”の運行をする目的で作られており、日本の保安基準に適合させるのに、たいへんな苦労があった。
保安基準やレベル2認証に合わせた仕様変更
そもそもスイッチバック運行するのが前提なので、車両に前後がない。そこで、ドアがある側から見て左が前になるようにし、灯火類を保安基準に合うように変更。前照灯は光量が、制動灯は面積が、ウィンカーは視認角度が不足していたため、すべてを交換した。
また、オリジナル状態では運転席がない。しかし日本の公道ではレベル2で運行させるため、運転席は設置されていなければならない。そこで、床面積の一部を書類上の“運転席”と定義し、そこからの直接視界や間接視界が保安基準に適合するよう、ミラーやカメラを設置している。ちなみに人が運転する際は、X BOX社のゲームコントローラーを使用するが、これはオリジナル車両を有人運転する際のデフォルト装備だ。