リフトアップで何がおきるのか?~スズキ・ジムニー ④旋回時の挙動(応用編)[クルマの運動学講座・その4]
今回は、このシリーズの最終講義としてパナールロッド付車両の旋回時の挙動について、もう少し詳しく、少し極端で面白い例も使って解説します。
TEXT:J.J.Kinetickler
先回講義したように、パナールロッドが傾斜していると旋回時の荷重移動で、ばねが寄与する分とリンクが寄与する分の割合が左右輪で大きく変わってしまいます。
この図の場合、左輪はパナールロッド経由が大きく、右輪は逆にばね経由が大きくなります。ロール姿勢は、ばねによる荷重移動だけで決まるので左輪の沈み込みより右輪の浮き上がりが大きくなります。
この現象は旋回方向が変っても同じです。左旋回の場合は全てのベクトル(矢印)が逆向きになりますが結果は同じです。左輪はパナールロッド経由の荷重移動が大きく、逆に右輪は、ばね経由の荷重移動が大きくなります。これにより左旋回のロール姿勢は左輪の浮き上がりより右輪の沈み込みが大きくなります。
結局、左右どちら向きの旋回でもロール姿勢は、ばねによる荷重移動だけで決まるので大袈裟に上下するのが右輪で、動きが少ないのが左輪です。
またロールの過程での荷重移動の速度も左右輪で異なります。リンクによる荷重移動はほぼ瞬間的におこりますが、ばねによる荷重移動は荷重移動はロールにつれて起きるので遅れて生じることになります。この差が左右輪で大きいと運転感覚にも違和感が出てきます。