ロールするから荷重移動する?| ロールとロールセンターの真実:基礎編 ①
[クルマの運動学講座・その10]
今回から始まる講義は、「ロールとロールセンターの真実」がテーマです。
クルマ好きが集まれば一度は話題にする「ロール」「ロールセンター」「荷重移動」についての皆さんの知識は、おそらく、たぶん間違っているというお話です。
第1回目は基礎編①「ロールするから荷重移動する?」です。
TEXT&FIGURE:J.J.Kinetickler
それでは、さっそく旋回時(コーナリング時)の力の釣り合いを考えましょう。
これはクルマを背面(後方)から見たもので、左に旋回しようとしている図です。
ロールとはクルマが旋回する時、カーブの外側に傾く現象のこと…「そんなの分かってる!」という方に質問です。
クルマが旋回する時、カーブの内側のタイヤから外側のタイヤに荷重が移動しますが「なぜ荷重が移動するのでしょう?」
「ロールするから? 」そうではありません。たとえばゴーカートはサスペンションがないのでロールしませんが荷重移動はします。
たしかにロールすることによって重心が外側に移動し、さらにその分は荷重が移動するので、厳密にいえばロールによる荷重移動もあるのですが、その割合は普通の乗用車では荷重移動全体のせいぜい10%程度、残り90%は「重心が地面より高い」からです。
だから、ばねをガチガチに固めてロールを半分に減らしたとしても、荷重移動は一般的な乗用車で5%ほど少なくなるだけです。