ロールセンターではロールしない| ロールとロールセンターの真実:基礎編 ④
[クルマの運動学講座・その13]
講義の冒頭で「ロールセンターではロールしない」といいました。
「ロールする中心だから“ロールセンター”じゃないのか?」と疑問に思われる方も多いと思います。今回はそれについて事例を含めて詳しく解説します。
TEXT&FIGURE:J.J.Kinetickler
いきなりですが、この図は第2回目の講座でとりあげた、このリジッドアクスルは「ロールセンターでロール」するまれな例でした。
これは左右輪がつながったリジッドアクスルでロールセンターは車体側のピンの中心、それがアクスル側の長穴に嵌まっている構造です。
こういう場合はこのピンの回りにロールします。「力のやり取りをする点」と「幾何学的な回転の中心」が一致するからです。
リジッドアクスルは大抵の場合、車体(ばね上)と車軸(ばね下)が一点(一軸)のロールセンターでつながっているのでロールセンター回りにロールします。
それでは、一般的な独立懸架の場合はどうなるのでしょうか?
独立懸架はリジッドアクスルと異なり左右輪が連結していません。そのため左右輪はそれぞれのサスペンションリンクの動きと、それに加わる力で個別に無関係にストロークして釣り合います。
図の「旋回外輪側を沈める力」に従って沈み、「旋回内輪側を浮かせる力」に従って浮き上がる。その結果ロールするだけです。
左右輪が別々にストロークしてクルマの左右が浮き沈みし結果として傾きが決まる…そういう感じです。
したがってクルマにロールセンターというピンや軸のようなものがあって、その回りにロールするということはありません。
だからロールセンターが高いからといってクルマの上の方で回転する…などということは絶対ないのです。