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福野礼一郎のTOKYO中古車研究所™ 第166回 | 1965年型セブンS2⑥ 小物DIY作業まとめ編

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福野礼一郎のTOKYO中古車研究所™ 第166回 | 1965年型セブンS2⑥ 小物DIY作業まとめ編

「TOKYO中古車研究所」などと大袈裟なタイトルですが、私=福野礼一郎が1993年から2012年まで自動車雑誌3誌で152回連載し、多くの方に読んでいただいた連載記事のタイトルの復刻です。TOPPER編集部の依頼で11年ぶりに連載再開しますが、内容的には単なる「私的ブログ」です。TOPPERのコンテンツの中では一人浮いてると思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。
(このコンテンツは著者の希望でTOPPERの「総合人気ランキング」には反映されません)

(本文文字量13900字) *通常は雑誌1ページで2000〜2500字

このたびの石川県能登地方を震源とする大規模な地震によりお亡くなりになられた方々に謹んでお悔やみを申し上げますとともに、被災されました皆様に心からお見舞い申し上げます。被災地皆様の安全と一日も早い復興を衷心よりお祈り申し上げております。本稿連載の原稿料の一部をAmazon Payを通じて日本赤十字社に義援金として再度寄付させていただきました。

当時物LUCASヘッドライトの殻割り清掃

お知らせ:すでにみなさまご存知かと思いますが、YouTube「CBR WATAHIKI」チャンネルで2023年4月~9月に行った本稿のセブンS2=HYW334Cのノーズコーン/クラムシェルフェンダー/リヤフェンダーのアルミ化板金加工の作業の様子が、順次動画でアップされています。「CBR WATAHIKI」チェンネルにご登録いただいて、ぜひご覧になってください。木型も作らず、当て金とハンマー1本とイングリッシュローラーだけ使ってフェンダーやカウルを作り出していく魔術的技法は必見です。

良心的中古車屋スティックシフト荒井克尚社長 セブンは2024年1月22日(月)にエバラプランニングの下村さんのトランポで水戸の綿引名人のところに再度運んで、名人がいまメタル部分の再仕上げを行なってくださっています。ということで今月のT中研™は福野さんがこの1年間で行なってきたプチDIYをご紹介します。

福野 記事にするようなネタじゃないんですが、クルマいじりはもう場所も元気もないんで、仕事の合間に自宅でちょこちょこやった作業の中で写真を撮影してあったものだけです。オソマツすみません。

荒井 でもヘッドライトの殻割り洗浄にはちょっと驚きました。

福野 いえいえ殻割り洗浄くらいみなさんDIYでさかんにやっておられますよ。

▶︎ヘッドライトの殻割り洗浄:ヘッドライトの透明レンズの周囲の接着剤を剥がして樹脂製のレンズを外し、ヘッドライトの内面をクリーニングしたり再めっき/再塗装などしてから再度接着+シーリングするというDIY掃除の技法。

荒井 でもみなさんやってるのはいまもんの樹脂風防+樹脂ケースのヘッドライトの話で、むかしの丸型ヘッドライトの「かしめ」をゆるめてガラスレンズを外して洗浄というのはあまり聞いたことないです。

▶︎昔のヘッドライトはプレス鋼板を内面めっきした反射鏡の周囲にゴムシールをはめてからガラス製レンズを乗せ、周囲のフランジを折り曲げてかしめてレンズを圧着固定(兼防水)するという構造だった。

福野 ガラスレンズのヘッドライトの殻割りもむかしはみんなDIYでやってました。私もBMW2002についていた2灯のHellaとアルファのジュリアについてた2灯のキャレロでやったことがあります。あとマーシャルもやったかな。かしめをゆるめるのはなかなか難儀なんですが、見事ガラスが外れて内面をごしごし洗うときはホントに気持ちいいですよね。

荒井 今回は購入したビンテージもんのLUCAS 700を割って洗ったんですね。

福野 はい。ガラスのセンターにトーチの絵が浮き出しになっている、いわゆるルーカスの「松明(たいまつ)」と呼ばれているタイプです。反射鏡の形状の関係で真正面から見るとW反射鏡みたいに反射鏡が二重になって見えるヘッドライト。

荒井 実際はW反射じゃないんですか。

福野 違うんですねこれが。1枚反射鏡なのに二重になって見える。非常に面白い反射設計です。LUCAS 700→松明はクラシックカー用にルーカスが再生産していて安く売ってるんですが、私は探し回って50年代の「M1」という刻印の入っている極初期型を手に入れました。

荒井 具体的にはいまのものと何が違うんですか? レンズカット?

福野 レンズカットは「M1」「M2」「M3」「M5」そしてリプロと大差はないんですが、肝心の松明の形が結構違うんです。

LUCAS 700の松明の比較。右端が現在販売されているリプロ、中央が70年代の「M3」、左端が1950年代にこのヘッドライトが登場した際の最初期型「M1」。松明の炎や図柄が写実的で繊細なのは「M1」だけの特徴だ
松明が繊細な初期の製品はガラスの下端に「M1」の文字がある

荒井 なるほど。松明のデティールがぜんぜん違うんですね。こうやって比べちゃうと、いまのはなんかぜんぜん松明に見えませんね。燃えてない(笑)。「M1」が欲しくなる気持ちもわかります。

福野 「M3」以降はもう松明の形は簡略化されてるので、炎がくっきり綺麗なのは50年代の「M1」だけです。まあこんなのつけてあったって誰ひとり気づきませんけどね。

荒井 かなり珍しいですか。

福野 ガラスは割れますからねえ。ビンテージのヘッドライトはどのメーカーのものでも希少です。私が最初国内で見つけて買ったのは「M1」と「M3」のセットでした。でもってeBayで「M1」の1個売りを見つけて買い足しましたが、やはり出てきても高価ですね。割れたとき用にスペアを1個くらい確保しときたいんですが、なかなか「M1」の出物はないです。「M3」や「M5」ならそこそこあるんですが。

著者
福野礼一郎
自動車評論家

東京都生まれ。自動車評論家。自動車の特質を慣例や風評に頼らず、材質や構造から冷静に分析し論評。自動車に限らない機械に対する旺盛な知識欲が緻密な取材を呼び、積み重ねてきた経験と相乗し、独自の世界を築くに至っている。著書は『クルマはかくして作られる』シリーズ(二玄社、カーグラフィック)、『スポーツカー論』『人とものの讃歌』(三栄)など多数。

福野礼一郎のTOKYO中古車研究所™

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