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福野礼一郎のTOKYO中古車研究所™ 第172回 | ミニ クーパーS(F66/3ドア/2ℓICE)① 納車と第一印象

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福野礼一郎のTOKYO中古車研究所™ 第172回 | ミニ クーパーS(F66/3ドア/2ℓICE)① 納車と第一印象

「TOKYO中古車研究所」などと大袈裟なタイトルですが、私=福野礼一郎が1993年から2012年まで自動車雑誌3誌で152回連載し、多くの方に読んでいただいた連載記事のタイトルの復刻です。TOPPER編集部の依頼で11年ぶりに連載再開しますが、内容的には単なる「私的ブログ」です。TOPPERのコンテンツの中では一人浮いてると思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。
(このコンテンツは著者の希望でTOPPERの「総合人気ランキング」には反映されません)

(本文文字量10900字) *通常は雑誌1ページで2000~2500字

ミニ太田

2024年7月30日(火)。東京は午前9時から35度C超えの猛暑だ。

自宅で荒井さんにスティックシフトの2014年型116iでひろってもらってから、首都高速・環状線内回り→2号線→荏原ランプで中原街道下り線におり、洗足池を超えて、石川台の交差点の手前の東京都大田区雪谷2丁目にあるMINIの正規販売店「MINI太田」に午前10時30分に到着。ここは株式会社阿部商会が運営するディーラーだ。

良心的中古車屋(有)スティックシフト荒井克尚社長 こんにちはー。

MINI太田 セールスコンサルタント 庄田和宏さん お待ちしてました。どうぞお2階へ。

荒井 こちら福野さんです。

福野 初めまして。よろしくお願いします。

庄田さん この度はお買い上げいただいてどうもありがとうございました。本日はよろしくお願いします。

植原亮太さん(6月7日の金曜日の夜に渋谷のSHIBUYA SAKURA STAGEで行われたニューミニのイベントにわざわざ来てくださったMINI太田の支店長)いらっしゃいませ。こんにちは。

購入したのは4代目F66型「ミニ クーパー S」のローンチモデル=465万円。もちろんICE(内燃機関)車だ。

ブラックコーヒーを頂きながら、福野名義の車検証、自賠責証書、保証書+サービスブック、保証規定説明書、ルームミラー内蔵式ETC取扱説明書などが入った紺色のデニム地の車検証入れ、別の黒い布ケースに入った取扱説明書、なぜかミニHQのデザイン責任者のメッセージ入りの書類フォルダーに入った納品請求書など一式を庄田さんから手渡されて、車両受領書にサインする。登録用の委任状にはもちろん実印を押したが、受領書の捺印は不要だそうだ。いい時代になりました。

真っ先に車検証の内容を見てみる。

車検証入れと取説入れ、そして納品書のフォルダー。最近の付属品は無駄な紙を省いていることもあって、昔に比べるとぐんと薄く軽くなった。ケースにも一応エコっぽいイメージを演出している。いまだに紙の取扱説明書があるのは世界共通だが。
車検証。注目の記載重量は1320kg(前軸830kg/後軸490kg)。重い。
MINIからの記念品もいただいてしまった。家に帰って開封してみたら、黒い木製のがっしりとした、小物入れとしても使えるリモコンキー入れだった。高級車やスーパーカーでは豪華なリモコンキーボックスを納車時にプレゼントすることが多いが、ミニでももらえるとは思わなかった。写真はそのキーボックスとリモコン2個、MINI太田のキーホルダー、カードキー

4代目F66ミニ概要

ご存知の通り4代目ニューミニは、BEVの「ミニ クーパーE」と「ミニ クーパーSE」、ICEの「ミニ クーパーC」「ミニ クーパーS」の2本立て4グレード構成。前車のコードネームはJ01、後車はF66で、ここから分かるようにBEVとICEは似て非なるまったくの別物だ。J01は中国の光束汽車との共同開発で、現状では張家港工場のみで生産。F66については「BEVへの1本化までの繋ぎ」という当初目的のため、実質上3代目F56の「ビッグマイナーチェンジ」で、これまで通り英国オックスフォードシャーのカウリー工場で生産する。F66の設計基盤はミニ3ドア(F56/現行F66)と5ドア(F55/現行F65)でしか使ってないBMW UKL1だ。

世界的にBEVが売れていない状況だから、今後どういう展開になるかはわからない。ちなみにBMWの横置きFF車である1シリーズ(F52/F40/現行F70)、2シリーズ(F44/F45/F46/現行U06)、X1(F48/現行U11)、X2(F39/現行U10)、カントリーマン(F60/現行U25)、クラブマン(F54)の設計基盤はいずれもUKL2で、BMWのFR系CLARプラットフォーム車同様、BEVとICEで基本設計を共有している。ミニだけがBEV用プラットフォームを新設したわけで、これは大きな賭けだ。

ここでは先代F56との比較をしてみる。

ボディサイズを3代目F56と4代目F66で比べると、3代目F56が全高×全幅×全高=3863mm×1727mm×1414mm、ホイールベース2495mm、4代目F66は3876mm×1744mm×1432mm、ホイールベース2495mmである。ホイールベースは変わらず、全長で+13mm、全幅+17mm増加した(いずれも本国公称値)。すなわち基本パッケージはほぼ不変と考えていい。

全高値の違いはルーフアンテナの形状が左右しているのでパッケージ比較の参考にはならないが、F56のクーパー Sのローンチ時の標準タイヤが195/55-16で外径620mm、F66のクーパー S標準タイヤは215/45-17で外径625mmなので、地上高はわずか(2.5mm)に上がっているはずだ。

4代目F66ミニの2ℓ直4搭載クーパー Sの車検証記載重量は1320kg(前軸830kg/後軸490kg)。

ちょうど10年前の2014年5月に試乗した3代目F56の2ℓ直4+アイシン6速ATのクーパー Sの車検証記載重量は1270kg(前軸810kg/後軸460kg)だったから、前軸重で20kg、後軸重で30kg重くなっている。前後重量配分比でいうとF56が63.8:36.2、F66は62.9:37.1でわずかに改善しているが。

このステレオ写真みたいな合成画像は3代目と4代目の比較ではなく、10年前に行った2代目R56と3代目F56の比較だ。4代目F66の縦横断面のパッケージは3代目F56とほぼ同じと考えてよいから、いまさらだがこれを持ち出した。そもそもBMWミニの縦断面パッケージは、初代R50の時点から前軸中心↔ステアリング間の距離がFR車のように長く、ホイールベース長に対して後席が狭い反面、車体サイズの割に前席の居住感がゆったりした基本パッケージだった。重心高の高さを除けば「FFスポーツカー的パッケージング」といえる。したがって究極のスペース効率を目指してアレック・イシゴニスが1950年代後期に設計したオリジナルのミニとは出発の時点からまったく思想的に異なるクルマである。初代R50→2代R56のときに据え置きだったホイールベースはR56→F56で2495mmへ30mm長くなったが(F66も同寸)、10年前の写真計測では「前車軸↔ステアリング距離は変わっていないので、ホイルベースの延長分は100%居住スペースの拡大に回った」と分析した。
初代→2代目で75mm長くなった全長は、3代目F56ではさらに135mm延長。ホイールベースの30mm延長分を除く65mmの大半は、写真でおわかりのようにフロントオーバーハングである(赤ボディが3代目F56、内側に一回り小さく見えている白ボディが2代目R56)。写真計測ではオーバーハングだけでなくボンネット全体がざっと30mmも高くなっていることが判明した(=歩行者保護対策)。4代目F66はこの特徴をそのまま継承している。前席着座位置は2代目以降は変化してないので、3代目と4代目ではハイト調整を2代目より1~2段分くらい上げないと前方視界が確保できない(4代目のシートは手動式の場合アップ17段、ダウン21段)。
著者
福野礼一郎
自動車評論家

東京都生まれ。自動車評論家。自動車の特質を慣例や風評に頼らず、材質や構造から冷静に分析し論評。自動車に限らない機械に対する旺盛な知識欲が緻密な取材を呼び、積み重ねてきた経験と相乗し、独自の世界を築くに至っている。著書は『クルマはかくして作られる』シリーズ(二玄社、カーグラフィック)、『スポーツカー論』『人とものの讃歌』(三栄)など多数。

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