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福野礼一郎のTOKYO中古車研究所™ 第173回 | ミニ クーパーS(F66/3ドア/2ℓICE)② 試乗印象(首都高と二七通り)

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福野礼一郎のTOKYO中古車研究所™ 第173回 | ミニ クーパーS(F66/3ドア/2ℓICE)② 試乗印象(首都高と二七通り)

「TOKYO中古車研究所」などと大袈裟なタイトルですが、私=福野礼一郎が1993年から2012年まで自動車雑誌3誌で152回連載し、多くの方に読んでいただいた連載記事のタイトルの復刻です。TOPPER編集部の依頼で11年ぶりに連載再開しますが、内容的には単なる「私的ブログ」です。TOPPERのコンテンツの中では一人浮いてると思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。
(このコンテンツは著者の希望でTOPPERの「総合人気ランキング」には反映されません)

*写真は左右反転です

(本文文字量6700字) *通常は雑誌1ページで2000~2500字

前回に引き続き自分の買ったクルマのインプレです。雑誌記事のインプレよりも当然ながら好みや独断などの主観が多く入っていますが、文字数に制限がないので感じたこと全部書けますから、ニューミニのインプレとしては多少は詳細だと思います。

納車初見ぼっちインプレ(首都高速2号→環状線外回り)

福野 500万円も払って買ったばっかの自分のクルマを冷たく評論するなんて、嫌な職業ですよねえ。でも私は納車帰りのこの初見ドライブで、いつも自分のクルマの評価がおおむね決まっちゃいます。2000年末に購入した360スパイダーF1、2021年購入のF30の320iのマニュアルは、新車購入の帰り道の首都高で「だめだこりゃ」ってなっちゃって、家に着くころには「どうやって売ったもんだか」ってもう考えてましたから。

福野 荏原ランプから首都高速2号線に乗りまーす。いつも試乗でハンドリング感のチェックに使っている道路で、荒井さんから「MINI太田で買います」と聞いたときから「帰りに2号線を試してみれるな」と楽しみにしてきました。ここの印象で私のニューミニの印象は決まるでしょう。

自動車メーカーだけに「操作系全部管面操作」までには踏み切れておらず、操作系がステアリングとコンソールの物理スイッチに分散している。インパネのセンター下部の物理スイッチは近年のデザインとしては比較的直感的操作が可能だが、ステアリングスイッチはスイッチ自体が小さすぎて操作しにくい。サプライメーカーの設計・開発レベルの差異も関係してると思う。シート表皮は本革ではなく食物繊維系の「ビーガンレザー」。この写真だとステアリングの太さ加減がよくお分かりだろう

首都高速2号線へ。

福野 えー(ちょっと大きな声で)乗った矢先からロードノイズが大きくごーって車内に鳴り響いています。ロードノイズ感度はやはり結構高めですね。

福野 あと首都高名物の「目地」を通過したときのこのショック。強めのショックががん!と入力すると同時にボコンと音に変わっちゃってます。「だんだんだん」と目地ショックがきて「ボコンボコンボコン」とボディから音が出る。

福野 ショック自体の入力の大小は、タイヤのトレッドと縦ばねの特性、車重、サスペンションのばねとブッシュの設定などが関係し、ボコンという音はその振動を受けたボディが共振して鳴ってる異音ですから、この音にはたぶんボディの重量と構造と共振周波数が関係してるのだと思います。まあこれは知ったかぶりで、実は私はあんまりそのメカニズムがよくわかってないんですが。ただ経験的にロードノイズ感度が高いクルマ(反応が敏感→よくない)クルマと、ロードノイズ感度が低いクルマ(反応が鈍感→よい傾向)があることは確かです。このクルマはやや感度が高めという印象です。

福野 でも「たこーん、ぼこーん、とたーん」と鳴り響くほどではないですね。あれは車体構造とか制振材の省略(=軽量化とコスト)などの影響でフロアなどの大面積部位が太鼓鳴りしてるんだと思いますが。上下動の発生の経路は路面→トレッド→サイドウォール→ホイール→ハブ→サス→ボディですから、当然タイヤの特性によっても入力は大きく左右されます (本車OEM装着はオランダのVREDESTEIN ULTRAC 215/45-18)。

このときの車内の様子を、サイドウインドウに吸盤で取り付けたカメラの動画で再生して見てみると、目地を通るたびに体が大きく上下と前後に揺すられているのがわかる。まるで水枕が揺れているみたいだ。対して人間も無意識に反応して突っ張って、体を保持しているように見える。人間がここまで大きく揺すられているのだから、この動きを支えなくてはいけないシートは大変だし、乗り心地が悪いと疲労が蓄積されていくということもよくわかる。

福野 ボディの剛性感はそんなに悪くない印象です。「だんだんだんっ」と目地ショックがきて「ぼこんぼこんぼこん」とボディから音が出ますが、太鼓鳴りしないだけでなく、「ごぎっ、ぐぎっ」というような構造的な異音もでていません。FCA (現ステランティス)の旧世代のEMP1系列車などは、いくらブッシュを柔らかくして乗り心地をよくしても、大入力が入ると途端に馬脚を表して「ごきっ」とかって構造的異音がでてしまうということがままありました。EMP2以降ではその傾向は格段に減り、現在のEMP2第3世代のV3ではほとんど出ませんが、ニューミニ3ドアの剛性感はEMP2V3と同等か、ちょっと劣るかなというレベルです。

著者
福野礼一郎
自動車評論家

東京都生まれ。自動車評論家。自動車の特質を慣例や風評に頼らず、材質や構造から冷静に分析し論評。自動車に限らない機械に対する旺盛な知識欲が緻密な取材を呼び、積み重ねてきた経験と相乗し、独自の世界を築くに至っている。著書は『クルマはかくして作られる』シリーズ(二玄社、カーグラフィック)、『スポーツカー論』『人とものの讃歌』(三栄)など多数。

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