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自動車の「現実」と「しがらみ」その1・電力の現実

牧野茂雄の「車交箪笥」しゃこうだんす vol.11

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自動車の「現実」と「しがらみ」その1・電力の現実
(PHOTO:Shutterstock)

長くやってりゃ情報ルートと人脈は築ける。
もうかれこれ40年以上、自動車を取材してきたから、
結構なネットワークを持つことができた。
あちこち掘って、あちこち探ったネタを、
私個人の分析と私の価値観でお届けします。
TEXT:牧野茂雄(Shigeo MAKINO)

メディアは何かにつけ「日本は遅れている」と言う。「そのとおり」と思うこともあれば「いや、違う」と思うこともある。自動車では「日本はBEV(バッテリー電気自動車)シフトで出遅れた」と言われる。たしかに日系OEM(自動車メーカー)のBEV商品数は少ない。これは「開発の遅れ」が原因なのか。それともほかの要因があるのか。それともさまざまな「しがらみ」なのか。この件を少し掘ってみる。

まず現状を整理しよう。東日本大震災で発生した福島の原発(原子力発電所)事故以来、日本では多くの原発が商業発電を休止している。そのため明らかに電力が足りない。発電量と消費量の間の余裕度は、ときに2〜3%まで下がる。しかし、その一方で電力会社が自らBEVを推奨している。

「節電しましょう」
「熱中症予防にはエアコンを使いましょう」
「BEVに乗りましょう」

いったい電力業界は何を主張したいのか?

現在の日本ほど「いま、そのBEVに充電している電力はどこから来たのか」を特定しやすい国はない。ほぼ100%、火力発電である。欧州のように送電網が国をまたいでつながっているわけではないので、海外から電力を買うことはない。地域や天候によっては再エネ(再生可能エネルギー)が余ることもあるが、そういうときは再エネ発電を抑制している。

日本での原発は全電力の6%程度しか担っていない。短時間内の出力調整が不可能な原発は、どの国でも基礎電力を担う。24時間365日、一定出力での運転を続け、1日の中での電力需要の変動の影響を受けない基礎部分を担っている。「これだけは絶対に必要」という電力のうちの何割かを原発が支えている。

では、BEVが使う電力は、どんな発電方法で生み出されているのか。

著者
牧野 茂雄
テクニカルライター

1958年東京生まれ。新聞記者、雑誌編集長を経てフリーに。技術解説から企業経営、行政まで幅広く自動車産業界を取材してきた。中国やシンガポールなどの海外媒体にも寄稿。オーディオ誌「ステレオ時代」主筆としてオーディオ・音楽関係の執筆にも携わる。

牧野茂雄の「車交箪笥」しゃこうだんす

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