ユーロ7は中国の利益になるか。「日本の地位をねらう」中国勢
牧野茂雄の「車交箪笥」しゃこうだんす vol.3
長くやってりゃ情報ルートと人脈は築ける。
もうかれこれ40年以上、自動車を取材してきたから、
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あちこち掘って、あちこち探ったネタを、
私個人の分析と私の価値観でお届けします。
TEXT:牧野茂雄(Shigeo MAKINO)
EU(欧州連合)委員会が発表した次期排ガス規制「ユーロ7」最終案が物議をかもしている。排ガス中の有害物質削減は想定内だが、「これをクリアするには車両製造コストは1台平均2,000ユーロ上がる」「2025年7月導入は無理」などの声があがっている。また、EU委が掲げた「タイヤ摩耗粉規制」については「試験方法も確立されていないのに何をしようというのか」との反発がある。しかし、その一方で中国企業はビジネス拡大へと動いている。「ユーロ7は大きなチャンスになるかもしれない」と見ている企業も少なくない。ICE(内燃機関)開発とその関連の生産まで請け負う体制を狙い始めた。
ルノーと日産はことし3月、互いに相手の株を15%持ち合うという資本比率変更の変更を発表した。1999年の資本提携以来、23年間にわたって日産はルノーの支配下にあった。日産がルノーに出資した2002年以降も、フランスの法律の規定により日産が所有するルノー株には議決権がなく、ルノーは日産の経営を牛耳ってきた。これが解消され、互いに15%ずつ相手の議決権を握る体制になる。
一方ルノーは、ICE(内燃機関)と車両プラットフォームの開発を本体から分離し新会社「ホース(仮称)」に一元化する。ここには中国の浙江吉利控股集団も持ち株会社である吉利ホールディングス(以下=吉利)も出資する。吉利はルノーおよびメルセデス・ベンツのパワートレーン開発の一部をすでに請け負っている。メルセデス・ベンツとの協業はすでに設立されている「スマート・オートモービル」を中心に行われ、ルノーとは「ホース」で協業する。
ことしに入って「吉利と比亜迪汽車(BYDオート)がユーロ7対応の技術を欧州勢と共同開発する」との情報が舞い込んできた。吉利と比亜迪汽車はともに正味熱効率43%という世界最高効率のガソリンICEを実用化しており、その実績から「欧州のOEM(自動車メーカー)や大手サプライヤーが共同開発を打診した」というのだ。