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欧州自動車メーカーが訴える自動車版「エアバス」と日本の「軽並み」優遇| 牧野茂雄の「車交箪笥」しゃこうだんす vol.19

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欧州自動車メーカーが訴える自動車版「エアバス」と日本の「軽並み」優遇| 牧野茂雄の「車交箪笥」しゃこうだんす vol.19

長くやってりゃ情報ルートと人脈は築ける。
もうかれこれ40年以上、自動車を取材してきたから、
結構なネットワークを持つことができた。
あちこち掘って、あちこち探ったネタを、
私個人の分析と私の価値観でお届けします。
TEXT:牧野茂雄(Shigeo MAKINO)

欧州でBEV(バッテリー電気自動車)の売れ行きが鈍った。ACEA(欧州自動車工業会)がまとめた3月のEU(欧州連合)+EFTA(欧州自由貿易連合)+英国でのBEV販売台数は13万4397台、前年同月比11.3%減だった。1〜3月累計では44万8228台で、前年同期比3.5%のプラスだが、国別で見ると補助金が打ち切られたドイツが同14.1%減、イタリアが18.5%減などマイナスの目立つ国が出てきた。昨年の欧州市場全体では約202万台のBEVが売れたが、低価格帯を支えたのは中国製だった。その中国製は補助金の停止や関税率アップが待っている。

ことし3月のジュネーヴショー開幕前、2月19日にACEA(欧州自動車工業会)のルカ・デ・メオ会長は記者会見で「欧州議会選挙でだれが勝利しても、2035年時点で化石燃料を使用するICE(内燃機関)を搭載した乗用車の販売を事実上禁止するというEUの決定に異議を唱えるつもりはない」と語った。「いままで欧州の自動車業界は電動化に数十億ドルを投資した。この膨大な資金を無駄にするわけにはいかない」というのがその理由だ。

デ・メオ会長はルノーのCEO(最高経営責任者)でもあり、ICE禁止に反対しない背景は「いままでさんざんBEV開発に金を遣わせておいて、やっぱりICEも認めますでは困る」ということだ。デ・メオ会長は同時に「BEV普及には政府の支援が必要」「欧州のOEMが、旅客機のエアバスのように国や企業の枠を超えて連携することを望む」と訴えた。

Luca de Meo, ACEA President(PHOTO:ACEA)
著者
牧野 茂雄
テクニカルライター

1958年東京生まれ。新聞記者、雑誌編集長を経てフリーに。技術解説から企業経営、行政まで幅広く自動車産業界を取材してきた。中国やシンガポールなどの海外媒体にも寄稿。オーディオ誌「ステレオ時代」主筆としてオーディオ・音楽関係の執筆にも携わる。

牧野茂雄の「車交箪笥」しゃこうだんす

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