自動車業界の「疑心、暗鬼を生ず」 BEV一本槍を信じるか、否か。
牧野茂雄の「車交箪笥」しゃこうだんす vol.5
長くやってりゃ情報ルートと人脈は築ける。
もうかれこれ40年以上、自動車を取材してきたから、
結構なネットワークを持つことができた。
あちこち掘って、あちこち探ったネタを、
私個人の分析と私の価値観でお届けします。
TEXT:牧野茂雄(Shigeo MAKINO)
先週24〜26日の3日間、パシフィコ横浜でリアル開催された「人とくるまのテクノロジー展」は大盛況だった。しかし展示内容は様変わりした。2020年春、COVID-19(新型コロナウィルス感染症)の世界的流行による強烈な「金余り」が火を着けたBEV=バッテリー・エレクトリック・ビークル(バッテリー電気自動車)への投資熱が広がり、ついにその熱で日本の自動車部品や計測器、ソフトウェアといった分野に火の手があがった結果だ。本当にBEVだけの自動車市場が訪れるかどうかは「霞がかかったような見通し」であり、確信に至るような判断材料は世界的に存在しない。いま、各社を突き動かしているのは「疑心が暗鬼を生む」感覚にほかならない。
あれッ!? 変速機がないじゃないか!
アイシンもジヤトコもZFも、変速機を展示していない。過去の「人とくるまのテクノロジー展」には、必ず展示してあったのに、今回は展示なし。その代わり電動化のための部品・ユニットが展示されていた。
もうひとつ、計測器類とソフトウェアの展示が激増した。SDV=Software Defined Vehicle という、ハードウェアではなくソフトウェアが価値を決めるクルマがこれからは主流になるという流行への対応だ。変速機のような機械モノが激減したおかげで、私の興味は萎えてしまった。最終的にクルマを動かすのは機械機構なんだけどな……。
「ICE(内燃機関)はもう終わりだ」と本気で思っているOEM(自動車メーカー)あるいはサプライヤーの(素材・部品の供給元)経営幹部は、おそらく少数派だろう。しかし口では「もうICEはいい」「油臭い」などと言う。たしかに電動化に投資するのは、世の中一般では正義だ。
欧州と中国ではBEVとPHEV=プラグイン・ハイブリッド・エレクトリック・ビークル(外部から充電できるHEv)の合計、いわゆるECV=エレクトリカリー・チャージャブル・ビークル(充電可能車)の比率が増えている。欧州の老舗ESP=エンジニアリング・サービス・プロバイダー(開発請負会社)であるFEVから提供を受けたBEV+PHEVの2022年新車販売台数を掲載してあるので、ご覧いただきたい。