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欧米の「イチャモン自動車政策」は終わらない。日本は何かと気に入らない…という実態

牧野茂雄の「車交箪笥」しゃこうだんす

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欧米の「イチャモン自動車政策」は終わらない。日本は何かと気に入らない…という実態

長くやってりゃ情報ルートと人脈は築ける。
もうかれこれ40年以上、自動車を取材してきたから、
結構なネットワークを持つことができた。
あちこち掘って、あちこち探ったネタを、
私個人の分析と私の価値観でお届けします。
TEXT:牧野茂雄(Shigeo MAKINO)

2001年以降の20年間で自動車からのCO2排出を劇的に減らしたのは日本だ。IEA(国際エネルギー機関)がまとめた2001年を100としたときの自動車由来CO2(二酸化炭素)排出量で見ると、日本が1019年までに23%削減らしたのに対しドイツは3%増、フランスは1%減、イギリスは9%減、アメリカはさらに多く9%増だった。EUはコロナ禍からの経済復興にBEV(バッテリー・エレクトリック・ビークル)への補助金を掲げ、アメリカではバイデン政権がトランプ政権時代の決定をすべてひっくり返してBEV普及へと舵を切った。そしてEUもアメリカも「日本排除」をねらっている。

EU各国で自動車走行時に排出されるCO2が減らないことは、2015年ごろからEU委員会は相当に気にしていた。「地球温暖化で極地の氷が溶けると国土が水没する」と訴えているオランダでさえも2013年に自動車由来CO2排出削減が頭打ちになり、高性能車が売れるドイツでは順調にCO2排出が増えていたからである。

さらに、2015年9月にアメリカで発覚したVW(フォルクスワーゲン)のディーゼル排ガス不正によりディーゼル車の売れ行きが2016年後半から鈍り、2017年はその影響が顕著になり、それまでディーゼル車が稼いでいた燃費の取り分が激減し、結果的にEUでの自動車由来CO2排出が増えてしまった。そこでEU政府はBEV普及に取り組む。

当初EUは、BEVとPHEV(プラグイン・ハイブリッド・エレクトリック・ビークル)をECV(エレクトリカリー・チャージャブル・ビークル=外部から充電できる車)としてもてはやした。BEVは全て一律でCO2排出ゼロ。PHEVは単純な計算式によりベースのICE車比でCO2半分、3分の1、4分の1という大盤振る舞いを適用した。

しかし、EU委が「将来的にICE車を走れないようにしよう」と考え始め、ICEを搭載するPHEVを嫌うようになった。そうなった経緯については各方面を取材しいろいろな話を聞いたが、どうも筆者にはEU政府の官僚の間にはびこる左翼思想が原因ではないかと思えてならない。「自分たちだけが正しい。民衆は愚かだ。だから我われが導く」という、官僚が陥りやすい「思い上がり」が根底にあるように思える。

著者
牧野 茂雄
テクニカルライター

1958年東京生まれ。新聞記者、雑誌編集長を経てフリーに。技術解説から企業経営、行政まで幅広く自動車産業界を取材してきた。中国やシンガポールなどの海外媒体にも寄稿。オーディオ誌「ステレオ時代」主筆としとてオーディオ・音楽関係の執筆にも携わる。

牧野茂雄の「車交箪笥」しゃこうだんす

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