NEDO委託事業「CO2からのポリカーボネートジオール一段合成プロセスの開発」、研究開発に着手
日本製鉄、大阪公立大学、UBEは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業として「CO2からのポリカーボネートジオール一段合成プロセスの開発」が採択(※1)され、2023年4月より研究開発に着手した。
2050年のカーボンニュートラル社会の実現に向けて、化石燃料の利用に伴うCO2の排出を大幅に削減できる一つの手段として、CO2を炭素資源と捉え、多様な炭素化合物として再利用するカーボンリサイクル技術の確立が期待されている。特に化石燃料の代替として注目されている水素は供給不足なため、水素を必要としない高付加価値の炭素化合物製品は、2030年頃から普及・消費拡大が見込まれている。
NEDOは2022年9月に「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/カーボンリサイクル・次世代火力推進事業/カーボンリサイクル技術の共通基盤技術開発」に係る事業の公募を実施。今回の3者の開発が委託事業として採択された。
今回採択されたポリカーボネートジオールは、水素を必要としない高付加価値の炭素化合物を製造する代表的な素材であり、高機能ポリウレタンの原料である。
高機能ポリウレタンは、耐久性に優れることから、自動車のシート材などになる合成皮革、屋外壁などの塗料、床のコーティングなどに世界中で広く使われ、今後も需要増が見込まれている。その一方で、ポリカーボネートジオールの合成は2段階で行うのが主流で、環境負荷が高いことが大きな課題だった。
これに対して今回、CO2とアルコールの一種であるジオールからポリカーボネートジオールを低環境負荷かつ1段階で合成しようとする画期的なプロセスを開発した。
本研究開発に先立ち、大阪公立大学と日本製鉄は、NEDOの「先導研究プログラム(※2)/未踏チャレンジ2050事業(※3)」において、小規模反応器でCO2とジオールからポリカーボネートジオールを効率よく合成できる触媒プロセスを開発し、合成に関する基本原理を確認した。
この先導研究の成果を発展させ、次のフェーズであるベンチ試験設備の設計に繋げるために、より大きな反応器でも性能を確保できるような触媒技術の開発やプロセス開発をラボベースで行う。
ポリカーボネートジオールの世界トップメーカーであるUBEは、研究成果を事業化につなげるために、製品の品質評価や実用化までの課題抽出、事業性の検討の役割を担う。
「CO2からのポリカーボネートジオール一段合成プロセスの開発」の概要
事業テーマ
カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/カーボンリサイクル・次世代火力推進事業/カーボンリサイクル技術の共通基盤技術開発
実施者と主な研究開発内容
大阪公立大学(大阪公立大学からの再委託:東京大学、京都大学、東北大学)、日本製鉄、UBE
1. 触媒反応技術の開発…大阪公立大学
・高機能固体触媒の開発…大阪公立大学
本反応系に有効な高機能固体触媒を反応条件の最適化と共に開発する。
・触媒表面のメカニズム解析…東京大学
触媒表面での反応メカニズムを計算科学的に解明し、触媒改良に繋げる。
・反応速度モデルに基づく反応器設計…京都大学
実験データを基に反応速度モデルを構築し、反応形式、反応器の設計を行う。
・プロセスのCO2排出量試算(LCA)…東北大学
開発したプロセスフローのCO2排出量を試算すると共に、更なるCO2削減プロセスの提案を図る。
2. CO2の反応器への導入技術・プロセス検討…日本製鉄
長年蓄積してきたCO2利活用技術を活用して、新規プロセスでの反応器へのCO2導入技術を検討する。また、反応工程及び精製工程等のプロセスフローを検討し、事業性検討につなげる。
3. ラボ生成物の評価及び事業性の検討…UBE
ラボ反応評価で得られる生成物を性能評価し、ポリカーボネートジオールメーカーとして既存製品との違いを把握し、反応条件の改善に繋げる。また、開発したプロセスフロー及び既存製造プロセスを踏まえて、事業性を検討する。
実施期間
2023年度~2024年度までの2年間