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見えないはずのエンジン内部構造を可視化する。イナックの透明化技術によるリアルタイム観察と構造解析で開発・検証プロセスが大きく変わる。| 第3回 オートモーティブ ワールド【秋】-クルマの先端技術展-

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見えないはずのエンジン内部構造を可視化する。イナックの透明化技術によるリアルタイム観察と構造解析で開発・検証プロセスが大きく変わる。| 第3回 オートモーティブ ワールド【秋】-クルマの先端技術展-
ボタンを押すと機能を音声で説明してくれる、ポリカーボネートでできたエンジンの透明モデル。

展示会会場で、ひと際注目を集めていたエンジンやトラスミッションの透明なモデル。これらを展示してしたのが、愛知県岡崎市に本社を構える試作品製作の専業メーカー株式会社イナックだ。なぜこのような透明な素材を使用し、「内部が見える」モデルを作っているのか。透明化技術の目的や実用的な意味について、株式会社イナック東京営業所部長千旦雅彦氏に話を伺った。

TEXT&PHOTO :那須野明彦(Akihiko Nasuno)
主催:RX Japan株式会社
イナックHP:https://www.kk-inac.com/

樹脂を使用しガラス匹敵する透明度を実現

インホイールモーターの展示用カットモデル。カットモデルとはいうがこの形状で内部パーツまで一から製作されたもの。完成品をカットしたものではない。

「イナックは、自動車や航空機、医療など多岐にわたる分野で、透明かつ精密な試作品の製作を行う会社です。独自の透明化工法を強みとし、加工時に白濁しやすいポリカーボネートでもガラス匹敵する透明度を実現できます」と千旦氏は語る。

イナックが透明なモデルにこだわる理由は、その美しさと内部構造を可視化できる点にあるという。千旦氏は、「透明なモデルは、まずその美しさで目を引きますが、機械部品などの内部構造が可視化されることは技術者やエンジニアとって有益に働くのです」と語ってくれた。では透明なモデルはどのように製作されているのだろうか。

「素材には主にアクリルやポリカーボネートなど透明な樹脂を使っています。設計データをもとに、試作品の用途に応じて3Dプリンターや光造形による出力や、3軸、5軸のマシンニングセンタによる切削機械加工を行い、真空注型などを用いて部品を作ります。さらに、内部パーツには塗装やメッキを施して実物と同じように見える透明モデルを再現しています」

もし、設計データが提供されない場合でも、イナックの技術があれば、現物の計測や型取りを行い透明なモデルを作ることも可能だという。「製作にかかる時間は物にもよりますがおよそ1カ月ほどです」と千旦氏は補足する。

展示用のアクリルでできたブレーキキャリパー。透明度が高く内部構造が隅々まで目視できる。ピストンまでのオイルの流れも一目で理解できる。

内部構造の動作検証に役立つ透明モデル

レバーを回転させると内部のピストンが上下に動く。オイルや冷却水のラインなどエンジンの構造の学習に役立ち、技術者の教育用にも有効だ。
強度の高いポリカーボネートでできたトランスミッションケース。実物の内部機構を組み込み、シャフトを通して実際の動きを確認することが可能だ
著者
那須野明彦

1970年東京生まれ。趣味はバイクとプラモ。自動車専門誌、モノ情報誌の編集者を経て、2008年にフリーのライター・編集者として独立。自動車専門誌ではカーグッズやカーナビ、オーディオなどのインプレ記事を数多く手がける。現在は企業のオウンドメディア、自動車コラム、カーグッズ紹介記事、DIY書籍、DIYのノウハウコンテンツなどを執筆。

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