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FCVの未来を担うトヨタ、商用車市場での挑戦は水素社会実現の光明となるか

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FCVの未来を担うトヨタ、商用車市場での挑戦は水素社会実現の光明となるか

FCVは現状、EVに比べ普及が遅れている。

2023年、日本の乗用車・小型商用車販売に占めるEVの割合は約11%に達した一方、FCVはわずか0.01%程度にとどまっていることからもそれは明らかだ。

相対的に好調に見えるEVだが、これまでの勢いは無く停滞気味だ。EVシストを明言していた自動車メーカーも、続々と戦略の軌道修正を打ち出している。

これまでEV一強に見えていたが、ここにきてFCVに注目が集まっている。

富士経済の調査によると、2040年にはFCV市場が飛躍的に拡大すると予測されている。乗用車タイプのFCVは2022年度比130.3倍の10兆8,580億円、商用車タイプは34.2倍の2兆8,289億円に成長する見込みだ。

加え、燃料電池システム全体では18兆2,320億円という見通しだ。

FCVの中でも乗用車タイプが一歩リードしているが、牽引するのは中国や韓国を含むアジア地域だ。2040年の市場見通し10兆8,580億円のうち、4兆870億円がアジア向けとなるとのことだ。

FCVの普及には水素ステーションの普及拡大、車両価格低下が叫ばれて久しい。ことFCVのコスト面に関しては燃料電池モジュールを他の自動車メーカーや船舶、航空機など他のモビリティのメーカーに販売する動きを活発化させることで、製造コスト低減を狙う動きもある。

日本の自動車メーカー「トヨタ」も、FCV普及に向け商用車を中心に勝機を見出す。

トヨタの今を切り取り、今後の動向について考えてみる。

商用トラックの電動化需要が急増するアメリカの自動車市場と日本の動向

アメリカを中心とする北米市場で、商用車タイプのFCVが大きく伸長している背景から進めたい。

2040年の商用車タイプのFCVの市場予測は2兆8,289億円まで伸びると予測されているが、そのうち4,060億円が北米向けで、2022年度比では96.7倍の増加を見込む。

FCVがこの分野で注目を集める理由は明確だ。EVと比較して長い走行距離と短い充填時間という特性は、商用車の運用において大きな利点となるためだ。特に、決まったルートを走行することの多い商用車にとって、FCVのこれらの特徴は極めて魅力的と言える。

アメリカでは、EVやFCVタイプのトラック導入に向けた動きが盛んだ。カリフォルニア州をはじめ、商用トラックの電動化需要が急増している。

市場調査によると、アメリカのEVトラック市場は2030年までに約151億に達すると見込んでいる。

この潮流に乗り、自動車メーカーも積極的な展開を見せている。

例えば、ドイツのダイムラー・トラックは、EVトラック「RIZON」の車両総重量を約8.5トンに引き上げ、積載量を増やした新モデルをアメリカ市場に投入した。

この戦略は、一度に運べる荷物量を増やすことで輸送効率を高め、EVトラックの実用性と経済性を向上させることを目指している。

また、ゼロエミッションモビリティとインフラソリューションを製造するノルウェーのヘキサゴンプルスは、2024年後半に向け量産を開始する大型EVトラック「Tern RC8」を展示会で発表した。

当モデルの航続距離は約230マイル(約370km)で、米国日野のシャーシをベースに、ヘキサゴンプルスのゼロエミッション技術を搭載する。

そんな中、日本でも動きが見られる。

パナソニックエナジーが、初めて大型EVトラック向けに商用車専用の車載リチウムイオン電池を供給するようだ。当初は日本の工場から供給を開始し、2026年以降はアメリカのカンザス州の新工場からの供給を予定している。

一方、FCトラックの分野でも注目すべき動きがある。

ホンダとGMの共同開発による燃料電池システム搭載のコンセプトトラックの発表だ。

搭載するFCシステムは従来製品と比較し耐久性が倍増しているが、コスト面は先代に比べ2/3に削減されている。出力80kWのFCシステムを3つ搭載し合計出力は240kW、最高速度は時速113km。また700MPaの高圧水素タンクには82kgの水素を充填でき、連結車両が1回の水素充填で走行できる距離は約644kmとなる。

商用車タイプのFCVに注目が集まる日本。トヨタ、豊田通商なども新たな一手を打ち出す

過去に先行したのは乗用車のFCVだったが、現在関心が集まっているのは前述したように商用車のようだ。

例えばホンダの場合、2030年に6万基の燃料電池システムを販売する目標で、商用車への搭載と定置用電源での活用を牽引すると見込んでいる。またいすゞと提携し、燃料電池トラックを2027年に導入予定だ。これは、ホンダが開発と供給面でいすゞを後押しする構えだ。

自動車市場を牽引するトヨタ自動車も、電動化戦略の中FCVの量産は商用車を軸に取り組む方針を示した。 国内自動車メーカーによる商用車連合のCJPT(Commercial Japan Partnership Technologies)でも、商用車のFCV化を進めている。

また、トヨタの水素エンジンは「将来の社会実装に向けて既存ガソリンエンジンをコンバージョンする」という考えで作られる。

そのためガソリンエンジンからの変更は、デンソー製の水素インジェクターなど最小限のものだ。

しかしすでにガソリンエンジン同等の馬力・トルクは獲得しており、レースで戦える耐久性を実現していることはいうまでもない。航続距離延長のために液体水素搭載など周辺技術開発も始めており、「水素」への向き合い方は一歩抜きん出ていると言って差し支えない。

ここではトヨタ自動車、豊田通商の戦略について見ていこう。

九州を拠点に進めるFC車両戦略。新たな液体水素ステーションの実証試験も開始

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