石油精製で発生する副生水素、有効活用できればFCV数百万台分の燃料を補える可能性も
FCVの登場によって水素ステーションの普及が進められる昨今。水素の安定した供給は取り組まなくてはならない課題の一つだ。
そんな水素供給の課題解決にむけ、近年では製油所の水素製造装置の余力が注目されている。
製油所で利用されている石油精製設備は、原油を精製する過程で、脱硫プロセスやアンモニア合成、熱源などの用途で大量の水素必要とする。それらの水素は、製油所内で水素製造装置を用いて製造されている。
石油を作るために必要な水素は自分たちで作るという循環がすでに出来上がっているが、この時に「余り」の水素が発生する。
燃焼・爆発しやすい特徴を持つことから安全面の課題を持つ水素だが、平時水素を利用する製油所では、安全・安心の確保に実績と経験が蓄積されていることから、水素の取り扱いにおける信頼度も高い。
この「余り」の水素を活用できないだろうか、という動きがある。
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原油の精製過程において大量の水素を消費する製油所
原油の精製によりガソリンや灯軽油などを生産する製油所では、様々な装置の組み合せによって運用されている。
日本は、石油製品中の硫黄濃度やオクタン価をはじめとした製品規格が厳しく、運輸における製品需要が大きいことで知られる。それらの基準を満たすには、多数の脱硫装置や高度な分解装置が不可欠だ。
石油精製では、はじめに常圧蒸留塔、減圧蒸留塔により、原油をその沸点範囲に応じて複数の留分に分離。各留分ではそれぞれに適した方法でさらに精製・改質処理が加えられる。
原油に含まれる硫黄は多くの場合、脱硫装置にて硫化水素に転換して除去される。
まずこのプロセスで多量の水素が消費される。さらに、分解処理においても、脱硫処理と同様に大量の水素が消費されている。この大量の水素消費に対応すべく、製油所には水素製造装置や接触改質装置など、水素を生み出す装置も存在する。
水素製造装置は、水蒸気改質法によって水素を製造することができるため、製油所で多量消費される水素を補ってくれる。一方、接触改質装置は触媒を用いて重質ナフサを脱水素芳香族化することによりガソリン留分のオクタン価を高め、それと同時に水素を副生する仕組みの装置だ。
一般的にこの装置には、天然ガスや軽質ナフサを原料として触媒存在下、スチームで改質することにより水素を製造する水素プラントが併設される。
これらのプロセスで製造された水素は全てが自家消費されるわけではない。余剰分の水素が存在するのだ。