FHT 2モータースプリット|EVから時代は再びHEVなのか!?トヨタのハイブリッドシステムを振り返る①
アップルがEVの開発プロジェクトを中止したことを発表した。メルセデスも2030年までの全車EV化を撤回するなど、このところ「EV無双」の世界的トレンドに"揺り戻し" とも思える大きな変化が見られる。そこで、クルマの「ハイブリッド」のパイオニアと言えるトヨタのシステムを改めて振り返る。
トヨタのハイブリッドシステムとして基本形ともいえるのが横置き2モーター式。プリウスへの搭載を端緒に多くのバリエーションを増やし、機能を高め続けている。2022年1月に登場したシステムは、プリウスではない車種への初搭載で世間を驚かせた。今回を含め4回にわたり、2022年9月発行のMFiより抜粋して紹介する。
TEXT:MFi PHOTO:AISIN/MFi
エンジン出力を、遊星歯車機構によって発電機:MG1の駆動力と軸出力に分割する。さらに軸出力はMG2:駆動用モーターによってアシストされていて、駆動力をミックスすることができる。THS:トヨタ・ハイブリッド・システムは駆動電圧の高圧化や軸配置やトルク容量のバリエーション増加、減速機構の改良などを経てきたが、基本的な構造は1997年の初代プリウスから変わっていない。さまざまな機種展開を見せるなかで、最大勢力かつ中核を担うのが本項で扱う2モータースプリット式。Bセグメント(アクアクラス)から大型SUV(RAV4やRX)まで、多くの車種に搭載されている。
現行機種群の特徴が複軸配列の2モーター配置。横置きパワートレーンにおいては全長(軸方向の寸法)の短縮が求められる。第4世代と称する50系プリウスに搭載され初登場したユニットでは、第3世代までのエンジン―MG1―MG2という同軸配列に代えて、MG2を一段上に配するレイアウトとしている。なお、同軸配列は初代から続いていたもので、第3世代はMG2の減速を遊星歯車に頼り、これを動力分割機構の遊星歯車と並べる副列式遊星歯車としていたのがトピックだった。
しかし遊星歯車はかみ合い点が多く、伝達効率がさらに優れる平行軸歯車に改めれば高効率を狙える。潤滑方式にも改良を加えることで、先代比で駆動損失を約20%低減することに成功している。全長は先代409mmに対して362mmと著しく短縮。高さ方向には増すことになったが、ユニット上に載せるPCUも小型化できたことで、パワートレーン全体のコンパクト化を達成した。