【海外技術情報】DJI:ドローンの世界シェア70%を誇るDJIが電動アシスト自転車用ドライブユニット「Avinox Drive System」を発表
民生用ドローンの世界シェアNo.1企業であるDJIが、電動バイク用ドライブユニット「Avinox Drive System」を発表した。比類ないパワーと耐久性、インテリジェントな機能をライダーに提供するという。今回は、この「Avinox Drive System」をご紹介しよう。
日本においても、電動アシスト自転車は今や人々の移動に欠かせない交通手段の一つとなった。電動アシスト自転車の国内販売の開始は1993年だが、それ以降、性能とデザインが着々と進化するとともに、ルールが整備されてきた。その結果、2009年には50cc(原付一種)の販売台数を上回り、今では主流の子供乗せタイプだけでなく、シェアサイクルや宅配業務用などでも電動アシスト自転車が使われている。
グローバルでみると、電動アシスト自転車の売れ筋タイプは異なる。スポーツライドに特化した、いわゆるe-BIKEが主流だ。軽量高剛性なアルミ製やカーボンファイバー製フレームに搭載されるe-BIKEの電動ドライブユニットは、小型軽量であり航続距離100kmを越える。2011年にボッシュがスポーツバイク向けの電動バイク用ドライブユニットを市販したことが切っ掛けとなり、新たな市場を生み出した。
DJIがドローンで培った技術を活用したe-BIKE用ドライブユニットを発表
そんなe-BIKE用電動パワートレインを、2024年7月に開催された世界最大級の自転車見本市であるユーロバイク2024にてDJIが発表した。それが「Avinox Drive System」だ。
「Avinox Drive System」の重量はわずか2.52kg。それでいて105Nmもの高トルクを発揮する。筆者が知る限り、ボッシュ、シマノ、ヤマハの電動パワートレインのトルクは最大でも85Nmだ。この圧倒的な軽量&高トルクを実現するのは「革新的な複合遊星ギアと高性能ポリマー製ギアである」とDJIは主張した。サイズ、重量、出力の優れたバランスを達成しつつ、驚くほど静かな乗り心地を実現するという。
以下は公式情報ではないが
「ギア比40:1の複合遊星ギアボックスが使用されている。太陽歯車と、内側に金属ギアを備えた3つのポリマー製ヘリカル遊星歯車により、トルク出力が約 3.2 倍に増強される。ポリマーはノイズを低減するとともに、耐用年数を延ばすために使用される。ヘリカル歯車を使用するのは、負荷分散を改善し、動作ノイズを低減するためである。
外側のリングギアが内側の金属遊星歯車と噛み合い、出力トルクがさらに16.3倍に増す。次の段階はありふれたギアセットのように見えるが、さらに40倍のトルク出力を追加する。ファイナルドライブはライダーのペダリングを補助するワンウェイクラッチに接続される」
と、海外情報サイトに記載されていた。
「Avinox Drive System」では、DJIのスマートアシストアルゴリズムを採用。マルチセンサーを活用して、走行抵抗に基づいて継続的にアシスト走行を自動調整する。アシストモードは、標準装備の4つのモード(自動、エコ、トレイル、ターボ)から選択できる。ブーストモードを有効にして、必要に応じてパワーを急上昇させることも可能である。
高エネルギー密度を備えた軽量バッテリーを2種類(600Whと800Wh)ラインナップしており、長距離のアドベンチャーに十分な走行距離を確保する。急速充電技術を採用した800Whバッテリーは、1.5時間で0%から75%まで充電できる。
この「Avinox Drive System」を搭載したe-BIKEがAmflow「PL」(日本では未発売)。「ずば抜けたパワーと走行距離、パフォーマンスを組み合わせ、電動マウンテンバイクの走行体験に革命をもたらします」とDJIは発表している。
DJIのコーポレートストラテジー シニアディレクター、Christina Zhangは以下のように語った。
「DJIのイノベーションに対する情熱と、ドローンとカメラで培ったバッテリー&モーター技術が、『Avinox Drive System』の開発に繋がった。信頼性の高いモーターの開発、バッテリー管理、機械設計、エンジニアリングなどの当社が培った技術を活用してe-BIKEに進出したのは、当然の流れだ。この強力かつコンパクトな電動ドライブユニットは、当社の卓越した技術を体現しており、アウトドア事業におけるテクノロジーのトップブランドという新たな可能性をDJIにもたらす」
DJIはe-BIKE用ドライブユニットへの参入を端緒として、アウトドア事業でもトップブランドを目指すと宣言した。今後の動向をウォッチして行きたい。