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【海外技術情報】CATLが「フリーボイスーパーハイブリッドバッテリー」を発表

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【海外技術情報】CATLが「フリーボイスーパーハイブリッドバッテリー」を発表

EV用バッテリーで世界シェアNo.1を誇るCATLが、EVでの走行距離が400kmを超え4C超急速充電を実現する世界初のハイブリッド車用バッテリーである「Freevoy Super Hybrid Battery(フリーボイスーパーハイブリッドバッテリー)」の発売を発表した。それに合わせて発表したCATLのプレスリリースを翻訳・要約してお届けしよう。

革新的なソリューションとして、「フリーボイスーパーハイブリッドバッテリー」はPHEVとEREVのバッテリーを再定義する。 新エネルギー車市場では EREV(レンジエクステンダー搭載BEV)と PHEV(プラグインハイブリッド電気自動車)が注目を集めている。BEVの満足度の低さに対する消費者の不満は高まっている。航続距離の短さ、充電の遅さ、低温時の性能低下が、早急な解決が求められる重大な課題として浮上している。

EREVとPHEV向けに設計された「フリーボイスーパーハイブリッドバッテリー」は、既存のハイブリッド車に共通する欠点である頻繁な充電からドライバーを解放し、1回の充電で1週間の通勤に必要な電力を賄える。さらに、10分間の充電で280km以上の走行距離を実現する優れた充電速度を有する。

「フリーボイスーパーハイブリッドバッテリー」は、正極材料の表面改質技術と革新的な高電圧電解質配合を組み合わせることでナノ保護層を形成。活性層内の副反応を最小限に抑える。高活性の励起状態粒子を正極材料に組み込むことで、材料内のリチウムイオンの輸送効率が大幅に向上した。

独自開発したSOCフルシーン高精度モデル、BMSインテリジェントアルゴリズム、ハードウェアのアップグレードにより、SOC制御精度は40%向上した。全体の純電気利用率は10%以上増加し、その結果、400kmを超えるBEV走行距離を実現した。

同時に、バッテリーの充放電分極特性に関するモデルデータ分析を実施した。バッテリーの将来の放電容量を正確に予測し、バッテリーのマルチレベル電力予測および制御戦略を作成して、ハイブリッド車の電力性能を20%向上させた。

さらに、4C超急速充電技術を適用することで、10分間の充電で280km以上の走行距離を達成した。リチウムイオンの輸送は、カソード高速イオン伝導体コーティング技術、第2世代の急速充電グラファイト、アノード用の新しいナノコーティング技術、多段階層状電極設計、最新の超高伝導性電解質配合の適用により容易になり、ハイブリッド車が純粋な電気自動車に匹敵する究極の充電体験を提供できるようになった。

ナトリウムイオン電池技術も採用されており、新エネルギー車の低温限界を打ち破っている。-40度までの極寒環境での放電能力、-30度までの充電能力を実現し、-20度まで常温と同等のシームレスな運転体験を維持できる。

CATLは「フリーボイスーパーハイブリッドバッテリー」の低温性能を向上させるため、ナトリウムイオン電池技術を中心とした3つの革新的な技術を投入した。

第一に、先駆的なABバッテリーシステム統合技術を活用し、ナトリウムイオンバッテリーとリチウムイオンバッテリーを定義された比率と配置で組み合わせ、混合、直列、並列接続により低温範囲を5%向上させた。

次に、ABバッテリーシステムのモニタリング用のSOCベンチマークとして、ナトリウムイオンバッテリーを採用。リチウムイオンバッテリーの充電レベルの校正を支援する。これによりシステム制御の精度が30%向上し、 BEV走行距離が10km以上延長される。

低温環境下におけるリチウムイオンバッテリーとナトリウムイオンバッテリーのパフォーマンス差に対処するため、全温度範囲で正確なBMSテクノロジーを開発した。これは常時、異なる化学システムのターゲットを絞ったゾーン管理を実行し、高温および低温環境での不正確な充電予測や電力パフォーマンスの低下などの問題を緩和する。

「フリーボイスーパーハイブリッドバッテリー」はすでにLi Auto、AVATR、DEEPAL、CHANGAN NEVO、NETAなどの多数のモデルに採用されている。2025年までにGeely、Chery、GAC、VOYAHなどのブランドのハイブリッド車30モデルが発売される予定である。

著者
川島礼二郎
テクニカルライター

1973年神奈川県生まれ。大学卒業後、青年海外協力隊員としてケニアに赴任。帰国後、二輪車専門誌、機械系専門書の編集者等を経て独立。フリーランスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに執筆している。

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