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スズキ、「スイフト」のプレスしわ対策にJFEスチールの超高張力鋼板成形技術を採用

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スズキ、「スイフト」のプレスしわ対策にJFEスチールの超高張力鋼板成形技術を採用

JFEスチールは2月29日、同社が開発した「流入制御工法」と「ストレスリバース工法」が、スズキの「スイフト」のメンバーフロントバンパーの3部品において、980~1180MPa級の超高張力鋼板のプレスしわ対策および寸法精度変動対策技術として採用されたと発表した。

メンバーフロントバンパー
メンバーフロントバンパー

同社は、CO2排出量削減や燃費向上を目的とした車体軽量化ニーズの高まりを踏まえ、超高張力鋼板を提供してきた。

一般的に鋼板を湾曲した部品形状にプレス成形する場合において、成形途中に湾曲部に発生する「プレスしわ」と成形後に元の形に復元する「スプリングバック」と呼ばれる現象への対処が必要になる。

超高張力鋼板は車体軽量化に大きく貢献する素材であるものの、鋼板の板厚が薄く強度が高いほど、プレスしわが発生しやすくなる。プレスしわが発生すると、金型が損傷する、目標形状と異なる形状になる、といった課題が生じるため、超高張力鋼板適用拡大の阻害要因になっていた。

同社は、超高張力鋼板であってもプレスしわを抑制する成形工法に関する強いニーズにこたえるため流入制御工法を開発。今回採用された流入制御工法は、プレスしわの中でも特にプレス部周囲のフランジに発生するしわを低減させることを特徴とする技術となる。一般的にフランジしわはプレス成形時に材料の流入を低減(最適化)することにより抑制できることから、プレス成形時の流入量を多工程で最適化することでフランジしわの低減を実現した。

寸法精度変動対策として採用されたストレスリバース工法は、超高張力鋼板の材料強度の上昇に伴って増加するスプリングバック量の変化(寸法精度変動)を抑制する成形工法。

超高張力鋼板は通常の鋼板に比べ、成形時のスプリングバックと材料量産時の強度の変動幅が大きい傾向があるため、スプリングバック後に正しい部品形状となるように金型形状をより精密に設計する必要があり、事前の金型製作には多大な時間やコストがかかっていた。強度の変動幅のある材料を同じ金型で成形した場合、寸法精度の変動により部品公差から外れる恐れが生じる。

同社が開発したストレスリバース工法は、バウシンガー効果とよばれる変形の方向を逆にした直後の変形応力は小さくなるという鋼板特性を活用し、寸法精度変動を抑制する。同工法適用により、材料強度が変動した場合でもプレス部品の安定生産に貢献するという。

今回の対象部品であるメンバーフロントバンパーは、岡本プレス工業が量産を実施しており、同社と岡本プレス工業の共同開発により流入制御工法とストレスリバース工法の量産金型への適用を実現した。

同社は、今後も自動車部品の超高張力鋼板の適用拡大に貢献し、車体性能向上や軽量化を実現することで、持続可能な社会の実現に貢献していくとしている。

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