エンジンテクノロジー超基礎講座060|リッター30kmを実現したダイハツ・ミラ イースのエンジン[KF-VE]
「第3のエコカー」の愛称を引っ提げ登場した、リッター30キロを誇るダイハツ・ミラ イース。モーターも二次電池も、ターボチャージャーもスーパーチャージャーも装備しない。細かい積み重ねで実現した高性能を紹介しよう。
日本の自動車技術も決して欧州に劣っていないことを知らしめたマツダのスカイアクティブ・テクノロジー。ハイブリッドや過給機などの「飛び道具」を使わずとも、ガソリンエンジン車で3リッターカーを実現できることを示した。それに続けとばかりに、ダイハツが2011年に発表したのが、この「ミラ イース」だ。アナウンスする30km/ℓの成績はJC08モードでの計測値であり、コンベンショナルなエンジン車の燃費値において堂々のトップを誇った。
驚くべきはもうひとつあり、車両価格が最廉価グレードで80万円を切ること。これは某HEVの半額を目指した数字であり、非常に挑戦的かつ意欲的である。幾多もの障害を乗り越え、最高峰レベルの性能を実現できたのは、全社が一丸となって「ミラ イースをいい車にする」という強い目的意識を共有したから。そのためにダイハツは「バーチャルカンパニー」を設けてチーム/メンバーのベクトルを一致させた。まったくぶれない全員の想いが、ミラ イースを産んだのだ。
そもそも低燃費車とは自動車の維持費を抑えられることが魅力であり、その意味からすれば車両価格が低いのは理想。“ガソリン料金を節約できるのは富裕層だけ”ではいけないのだ。しかし当然ながら、安い車に高価な技術や素材を盛り込むことは困難。世界でいちばん進んでいる車を目指しながら、ありとあらゆるポイントで「無駄の節約」と「機能の見直し」がなされた。
ベースとなったエンジンはKF-VE型。ダイハツの軽自動車用ユニットとしては2006年にデビューしたロングストローク型のエンジンで、そこからさらにさまざまな改良がなされた。「いまある技術とリソースを最大限に活用し、リッター30キロを目指すプロセスは、非常に楽しくやりがいのある仕事でした」と、エンジニアは当時のインタビューで語っている。