エンジンテクノロジー超基礎講座100|電動ウォーターポンプの効果、開発の難しさ
冷やしたいときに冷やしたい量を送る。電動ウォーターポンプならではの芸当である。小型軽量で高耐久な製品を作るための勘所を訊いた。
プリウスのエンジンは高効率追求から、3代目から電動ウォーターポンプを採用した。これにより補機類がすべて電動となり、ベルトで駆動する補機がなくなった。
機械式ウォーターポンプ(WP)の流量は、エンジン回転数に依存する。そこでまず冷却系として最悪の条件である低回転で高負荷時(登坂などの場合)のポンプの流量を決めるが、すると、高回転で負荷が低い時は不必要な流量が冷却経路を流れてしまう。これに対して電動WPの場合は、流量の設定はエンジンの作動状態と関係なく自由にできる。電動化でポンプのダウンサイジングができるわけだ。
「最初はよくわからないので、機械式と同等くらいから話を始めました。すると500Wクラスのポンプが必要になります。当然12Vバッテリーからは電源がとれなくなってしまう。じゃあハイブリッド・バッテリーからとるか、となるとそれは“あるべき姿”と違うだろう、ということになりました」と開発を担当したアイシン精機のエンジニアは難しさを語る。最終的には最大流量80ℓ/分、12V電源で入力160Wのポンプに落ち着いたが、開発途上では、回路・モーター・ポンプの各セクション間の協業が欠かせなかった。