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エンジンテクノロジー超基礎講座098|多点点火の驚くべき実力:超高速燃焼で熱効率44%を目指す

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エンジンテクノロジー超基礎講座098|多点点火の驚くべき実力:超高速燃焼で熱効率44%を目指す

多点点火すれば、燃焼効率が飛躍的に上がることは、理論的にはこれまでも知られてきた。しかし「多点点火をどう行なうか?」という壁に実現を阻まれてきた。そこに挑戦したのが総合環境企業のミヤマである。
TEXT:高橋一平(TAKAHASHI Ippey)
*本記事は2011年6月に執筆したものです

火花点火を用いる内燃機関において、多点点火という技術概念は決して新しいものではない。しかし、問題はその実現性で、「それができれば......」という類の、発想はできても実現は難しいという「絵に描いた餅」的なものとされてきた。実際に、量産製品として存在していないのはもちろんのこと、実験的な試みとしても多くの目に触れる機会が得られるほどの成果を挙げた例はなかったといっていいだろう。苦労して形になったとしても、バルブ配置や燃焼室形状などに大きな影響を及ぼす複雑なものとなってしまうというのが、今までの「定説」であった。

しかし、ミヤマによる多点点火装置を目の前にしてみると、この「定説」が先入観というものに囚われていたものであることに気付かされる。既存型のスパークプラグを用いる発想では避けることのできなかった、物理的なレイアウトの問題を、ミヤマのそれでは「ヘッドガスケット型」とも言える、革新的な「スパークプラグ」の発明によって極めてシンプルに解決。ひと昔前なら電極の消耗などといったメインテナンス性が問題になったかもしれないが、21世紀を迎えた今、電極の消耗については耐熱性の高い金属を用いることで、既に解決しているのだ。

多点点火装置本体。基本的にはヘッドガスケットの形状をほぼそのままに型取ったアルミ製プレートだが、ボア部分には複数の放電部が設けられ、インテーク側(写真下側)には、点火用の高電圧を印加するためのターミナルが並んでいる。

燃焼室外周上に複数の点火装置を配置するという、火花点火式の内燃機関としては革新的といえる点火環境を、複雑な機構なしに実現。点火装置の数や形状は、試行錯誤の結果、得られたノウハウからきている。その汎用性の高さを生かし、現在は既存型エンジンを用いた実証実験を行なっており、ここに紹介しているSR20DE型エンジンで、すでに44%というディーゼルエンジンに迫る熱効率を実現している。

ボア部分の内側に並ぶ放電部(点火ギャップ)。白い部分は絶縁体で、一般的な点火プラグのそれと同様のセラミック系素材が用いられる。装置の厚さはわずか6mm。上死点ではピストンのトップランドがこの装置の内側に収まるかたちとなる。

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