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エンジンテクノロジー超基礎講座095|5ストロークエンジン:5行程目とは何か、なぜ奇数なのか

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エンジンテクノロジー超基礎講座095|5ストロークエンジン:5行程目とは何か、なぜ奇数なのか

世の中には現状に決して満足せず、さらにいいものができるはずだと模索する人が絶えずあらわれる。長い歴史と経験を有する4ストロークオットー機関の改良ではなく、そのものに疑念を抱いた、ユニークな機関を紹介しよう。
FIGURES:5-STROKE ENGINE / Gerhard SCHMITZ

4ストロークガソリンエンジンは、燃焼エネルギーの大半を熱損失として捨てている。再利用の手段として一般的なのがターボチャージャーだが、間にデバイスを用いずに直接排気エネルギーを使おうと考えたのが、この5ストロークエンジンである。開発者のシュミット氏は、「出力のためには低圧縮に、効率のためには高膨張にしたい。しかし従来のオットーサイクルでは圧縮=膨張ではないか」と課題を掲げた。圧縮<膨張としては近年ミラーサイクルが有効策だが、熱損失の回復には結びついていない。これらの要件をすべて満たす機関として、5ストロークエンジンは考案された。

エンジンのシリンダーブロック
シリンダーブロック。ご覧のように直列とも言いがたい、どちらかといえば狭角V型のような気筒配列を持つ。両側が高圧側シリンダーで、中央が低圧側シリンダー。低圧側はボア/ストロークともに数値を大きくしている。
エンジンの燃焼室
高圧側の燃焼室。手前の大きなバルブシートが吸気バルブ、奥の小径が排気バルブ。ねじの切ってあるホールのうち、ひとつは点火プラグ、もうひとつは筒内の圧力を検知するためのセンサー用。圧縮比は、当然高圧側のほうが高い。

中間に挟まれる低圧側シリンダーは膨張と排気行程のみのため、圧縮比は低いものの、フリクションは当然ながら増えている。また、低圧側をのぞけば360度クランクの直列2気筒構造であり、自動車への搭載には騒音と振動対策が要されるだろう。

いっぽうで仕様をみれば、最大トルクは5000rpm、最高出力にいたっては7000rpmもの高回転で得られていて、どのような設計としているのか興味は尽きない。現在は2+1気筒構造のプロトタイプであり、さらなるステージとしては吸気ポートの2本化、エキゾーストバルブにスイッチタペットを用いることによるターボの高効率利用、そして直噴化などを将来展望として掲げている。これらを踏まえ、BSFCを215g/kWhとし、プロトタイプからさらに20%の軽量化、そしてリッター当たり出力として150hpをねらっている。

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