エンジンテクノロジー超基礎講座093|現代エンジンに必須のEGRクーラー。小型化の鍵は「縦渦」
EGR(Exhaust Gas Recirculation=排出ガス再循環)とは、エンジンの排出ガスの一部を燃焼室に戻す技術だ。EGRを用いて燃焼室内の新気の割合を下げることで、燃焼室内の温度を下げ、NOxの発生を抑えることができる。現代では、その効果に加えてポンピングロスを軽減し、燃費を改善するためのデバイスとして重要視されている。
なかでもールドEGRが注目されている。クールドと言うだけに、還流させる排出ガスを冷却するEGRクーラーがポイントだ。高温のガス(クーラー入口で約500~900°C)を水冷式クーラーコアに通し、約120~130°Cまで温度を下げるのがEGRクーラーの役目である。当然だがガスの入口から出口までの距離を長くとり、コア内部の展開を広くすれば冷却性能は上がる。しかし、場所の取り合いが厳しいエンジンルームではサイズの制約は厳しい。そこで過去にカルソニックカンセイと東京ラヂエーターの開発チームが注目したのが、排出ガスの流し方だった。
ガスが流れる際の抵抗を最小化する渦発生のメカニズムを解析した結果、理想的な「縦渦」を発生させるフィンの形状を新たに台形にしたVGフィン(Vortex Generator FIN)を開発した。粘性を持つガスが壁面近くを流れると発生し抵抗となってしまう境界層について、VGフィンで縦渦を発生させ、境界層を撹拌・破壊することで効率を上げるという考えだ。これにより、同一性能では21~29%もの軽量化と12%(長手方向)の小型化が実現できた。