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自動運転は地域ニーズに合ったそれぞれの"特別解"を投入すべき|自動運転はどこへいくのか?①

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自動運転は地域ニーズに合ったそれぞれの"特別解"を投入すべき|自動運転はどこへいくのか?①

ADAS(Advanced Driver Assistance System=先進運転支援システム)の末尾単語「システム」は「系統」の意味を持つ。ADASの究極系はADS(Automated Driving System=自動運転システム)であり、運転動作に人間は不要になる。果たしてADは目指すべき未来なのか、この領域のエキスパートである古川 修氏に訊いた。

TEXT&Portrait:牧野茂雄(Shigeo MAKINO)

ホンダが1986年に設立した和光基礎技術研究センターで、自動運転の研究チームが立ち上がった。その初代室長が古川氏だった。古川氏は世界初の4WS(4輪操舵機構)を開発し、これを初めて搭載した「プレリュード」が発売されたのが1987年4月。4WSというシステムのメディア向け説明役をこなしながら、自動運転研究に着手した。その当時からの話を伺った。

LKAの起源は和光基礎技術研究センター

「市販車に搭載する技術は短期間で開発することが多かったが、研究所としては『魅力のある技術が少ない』と考えていた。4WSやABS、エアバッグは10年以上をかけて開発した。長期的な視野で将来必要になるものをいまから目指すべきではないかという趣旨で基礎技術研究センターが立ち上がった。そこで取り組むテーマのひとつが自動運転だった。当時すでにクルマの知能化ということが言われ始めていた。究極の自動化が自動運転であり、その研究をやれば、そこで蓄積された要素技術を運転支援に応用できて役立つのではないかという考え方だった」

古川氏は当時をこう振り返る。

「まずはカメラを使った道路認識から入る。研究所内のテストコースに白線を敷き、その中を自動操舵で走ることから始めた。大学での私の研究テーマが『人間の運転動作のモデル化』だったのでAT車を使った4〜5km/hのノロノロ運転から始めたが、割と上手くいった。アクセルとブレーキは人間が操作した。人間は時間換算して1.5〜2.0秒くらい先を見るからうまく操舵できるが、カメラにあまり近くを見せると、自車位置を見て操作するため細かい修正舵がしょっちゅう入る。だから少し遠くを見せた」

「いまどんなカーブを曲がっているかはヨーレートセンサーでわかる。このまま行くとカーブを外れるかどうかの偏差を計算し、その分だけステアリングを切り増すか戻すかを実行する。それでカーブに沿って走れる。これはいまLKA(車線維持支援)システムがやっていることとほぼ同じだ」

その後、自動運転の実験はカリフォルニアの広大なテストコースに場を移し、パワートレーンの自動制御も加え、100km/hを超える速度域まで実験は広がったという。目標車速を置き、カーブが近付いたら車速を落とし、直進になったら車速を上げる。カメラで白線を検出することで適切な判断を自動で行なわせた。レーダーは自前で開発した。この技術の延長でLKAが生まれ、車速制御技術はACCへと発展した。

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著者
牧野 茂雄
テクニカルライター

1958年東京生まれ。新聞記者、雑誌編集長を経てフリーに。技術解説から企業経営、行政まで幅広く自動車産業界を取材してきた。中国やシンガポールなどの海外媒体にも寄稿。オーディオ誌「ステレオ時代」主筆としてオーディオ・音楽関係の執筆にも携わる。

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