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インプレッサSTI Sportグレードが目指した車体挙動:タイヤのキャパシティをしっかりと使うためのサス

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インプレッサSTI Sportグレードが目指した車体挙動:タイヤのキャパシティをしっかりと使うためのサス

操舵の応答性が高くステアリングに素直に反応してくれるクルマを、もっと多くのユーザーへ......。ベーシックモデルのチューニングでSTIが重視したのは、内輪接地荷重の減少をいかに抑えるか、ということだった。
TEXT:世良耕太(Kota SERA) PHOTO:MFi FIGURE:SHOWA

SUBARUは2020年10月8日にインプレッサ(16年10月にフルモデルチェンジ)を一部改良し、その際、最上級グレードとしてSTI Sportを新たに設定した。STIはニュルブルクリンク24時間やSUPER GT GT300への参戦などのモータースポーツ活動を通じて技術を磨き、その技術をWRXなどの高性能モデルに投入してきた。「圧倒的なポテンシャル」とか、「究極のドライビングプレジャー」といったフレーズが似合うモデルだ。エンジンは高出力で、駆動方式は当然AWD(常時全輪駆動)である。

インプレッサSTI Sportはちょっと毛色が違う。AWDの設定もあるが、FF(前輪駆動)が用意されているのだ。FFはSTI Sportシリーズとしてこのインプレッサが初だという。

STI Sportグレードでは初となるFF車も設定
フロントはストラット、リヤはダブルウィッシュボーン式。リヤダンパーは減衰力固定。ただし、減衰力の仕様はベース車とは異なる。高津氏はヴィヴィオ(1992年)のサスペンション設計を担当した当時から「ばね上の動きは穏やかにしたい」と思い続けているという。FFなので当然のことながら、プロペラシャフトとデフは見あたらない。

「AWDは要らないというお客さまも実際にはいらっしゃいます。そういったお客さまにもSTIが持つ付加価値を味わっていただきたい。これまでのSTI Sportはエンジン出力が高く、タイヤのグリップが高くてハイパフォーマンス。そうであるがゆえに敬遠していたお客さまに対して、ぐっとハードルを下げ、多くのかたにSTI Sportの世界観に触れていただくのが狙いです」

直近のWRX STI(2014年デビュー)をチーフエンジニアとして立ち上げた当事者でもあるスバルテクニカルインターナショナルの高津益夫氏は説明する。「圧倒的」とか「究極」のイメージが強いが、じつはSTIは「同乗者も気持ち良い『運転がうまくなる』クルマ」をキャッチフレーズに掲げており、今回のSTI Sportはこの部分にスポットを当てたコンセプトだ。搭載するエンジンはFB20型の2.0L水平対向4気筒自然吸気を搭載。最高出力は113kW(154ps)/6000rpm、最大トルクは196Nm/4000rpmを発生。組み合わせるトランスミッションはチェーン式CVTである。FF仕様の車重はAWD仕様より50kg軽く1350kg。大まかにいってフロントで10kg、リヤで40kg軽くなるイメージだ。

著者
世良 耕太
テクニカルライター

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめとするモータースポーツの取材に携わる。10年間勤務したあと独立。モータースポーツや自動車のテクノロジーの取材で欧州その他世界を駆け回る。

部品サプライヤー・自動車メーカーのエンジニアへの数多くの取材を通して得たテクノロジーへの理解度の高さがセリングポイント。雑誌、web媒体への寄稿だけでなく、「トヨタ ル・マン24時間レース制覇までの4551日」(著)「自動車エンジンの技術」(共著)「エイドリアン・ニューウェイHOW TO BUILD A CAR」(監修)などもある。

興味の対象は、クルマだけでなく、F1、建築、ウィスキーなど多岐にわたる。日本カー・オブ・ザ・イヤー2020-2021選考委員。

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