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小型商用EVナンバー取得という「前例なき挑戦」を創業2年のEVベンチャーが成し遂げられたワケ。|100カ所近くの改善を経ての悲願...HW ELECTRO『ELEMO』の開発秘話に迫る。

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小型商用EVナンバー取得という「前例なき挑戦」を創業2年のEVベンチャーが成し遂げられたワケ。|100カ所近くの改善を経ての悲願...HW ELECTRO『ELEMO』の開発秘話に迫る。
軽タイプの商用EV「ELEMO-K」

2021年、輸入小型EVの商用車ナンバーを取得し、国内初の商用EVメーカーとなったHW ELECTRO株式会社。展開する「ELEMO(エレモ)」シリーズは、コンパクトな軽から全長5mを超えるバンタイプまで幅広い車種をラインナップ。2025年の発売に向け新型商用EVの開発を進めている。今回は、東京・お台場のショールームにお邪魔した。出迎えてくれたのは、C.I.戦略室室長の大谷敏行氏、製品開発部部長の神垣 学氏、販売戦略推進部の田中健貴氏。商用EVの実車を目にしながら、輸入車のカスタマイズや、オリジナルEV開発の経緯について伺った。聞けば、国内初の商用EVナンバー取得への道は決して楽ではなかったという。

TEXT&PHOTO 石原健児

国内初の商用EV認証を取得、輸入車を100カ所近く改善

HWEショールーム

東京・お台場、海を臨むビルの1階にHW ELECTRO株式会社(以下HWE)のショールームがある。展示されているのは同社が展開する多用途EV商用車「ELEMO(エレモ)シリーズ」だ。入口横にはバンタイプでシリーズ最大の「ELEMO‐L」が、部屋の奥には軽自動車タイプでシリーズ最小の「ELEMO-K」が展示されている。

HWEは自社で工場を持たないファブレスメーカー。2019年の創業後、中国メーカーCENNTRO(セントロ)製EV「METRO(メトロ)」の輸入・国内販売を目指した。開発・プロモーションの陣頭指揮をとるのはC.I.戦略室室長の大谷敏行氏。製造現場は製品開発部部長の神垣 学氏が担当した。

国内で車を販売するためには、陸運局で検査を受けナンバーを取得する必要がある。ナンバー申請の第一歩として大谷氏・神垣氏らスタッフは、輸入候補車「METRO(メトロ)」に試乗し、ブレーキの効きや走行時のショックなどをチェック。車両仕様を日本の法規制に合わせるための改善に取り掛かった。

しかし、国内では軽EV輸入車の商用車において認可の前例がない。HWE側は陸運局や関連部署に何度も通い相談を重ねた。改善が必要だったのは主に安全面。「日本国内の保安基準をクリアするため、シートベルトの安全機構やオートライトの搭載など、さまざまな安全装置を付け加えました」と神垣氏は語る。それだけではない。車に厳しい目を持つ日本ユーザー向けに、より良い車を提供するため法規に抵触しない場所にも手を入れた。左ハンドルから右ハンドルへの変更、といった大きな箇所から、細かい部品の変更まで改善は多岐にわたった。すべてを含めると、改良は100カ所近くに及んだ。2021年「ELEMO(エレモ)」と名付けられた販売車のプロトタイプモデルは、国内初となる軽商用EV車の認証を取得。書類の準備・車両の改善など、申請を目指してからは1年以上、創業からは2年が経過していた。

製造現場に直接指導、販売前後のメンテナンス網を整備

著者
石原健児

取材ライター。
1966年東京生まれの北海道育ち。大学卒業後、イベント関連企業、不動産業を経て印刷業へ。勤務先のM&A・倒産をきっかけに2016年からライター業を始める。医療系WEB媒体、ビジネス誌「クオリタス」などで活動。医師、弁護士、企業経営者、エンドユーザーなどを対象に取材してきた。総取材人数はだいたい1500人。就学前までに自動車や転落事故で「九死に二生」位は得ていると思う。最近好きな言葉は「生きてるだけで丸儲け」。

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