フィンランドの自動運転事情。世界初の自動運転シャトルバス・水上タクシーを手掛けたその実力
フィンランドは、欧州の国々の中でも自動運転技術が進んでいることで知られている。
そもそも、夜間の走行や雪、雨、霧をはじめとした視界の悪い状態を苦手とする自動運転は、それらの悪天候が多い欧州の気候・環境は好ましくない。
ところが、フィンランドの自動運転開発スタートアップ「Sensible 4(センシブルフォー)」の自動運転ソフトウェアは、雨、濃霧、雪などを見分けることが可能かつ、極寒の地でも走れる性能、優れたポジショニング技術によりランドマークを必要としない正確な自己位置推定を実現した。
2023年7月28日には、事業・開発継続に必要な資金確保が困難となり、同社からは破産を申請する見通しが発表されている。
しかしながら、あらゆる環境下での運用を実現したこの自動運転ソフトウェアにより、欧州の自動運転にまつわる実証実験やそれを取り巻く技術は2010年代後半から2020年台にかけて飛躍的な進歩を見せた。
センシブルフォーによる技術の発展と、自動運転にまつわるフィンランドの状況は。
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Sensible 4が開発した世界初の全天候型自動運転シャトルバス「GACHA」。デザインは無印良品で知られる良品計画が担当
2019年3月8日、フィンランドの首都ヘルシンキの新しい中央図書館「Oodi」の前で、センシブルフォーが開発した世界初の全天候型自動運転シャトルバス「GACHA(ガチャ)」の試験走行が行われた。
そのデザインは、無印良品で知られる日本企業「良品計画」によって手がけられ、2019年度には、グッドデザイン賞に選ばれた。
公共交通機関として開発されたガチャだが、デザインなどの細部にまでこだわっていることが窺える。
そんなガチャはセンサーによる自車位置の高精度な推定と障害物検知により、大雨や雪、霧などの悪天候の中でも予め設定したルートを自動走行することが可能だ。冒頭で述べたように、悪天候が多い欧州の公共交通機関の自動運転化において、これらの機能は欠かせない。
2019年4月には、南部のエスポーで試験導入がスタートし、その後ハメーンリンナ、ヴァンター、ヘルシンキでも運行がはじまった。
国内でスムーズに実証実験に取りかかれたのは、フィンランドの法律上、公道を走るモビリティに必ずしも運転手の乗車を必要としないことも影響しているようだ。
最初の実証実験からおよそ1年後の2020年1月15日には、欧州や日本で自動運転バスを普及させることを目的とた「ソフトバンク」の子会社「SBドライブ」との協業が発表された。2月には伊藤忠商事や国際協力銀行(JBIC)からの出資を受けている。
それから2年後の2022年には、日本国内で実証実験が開始。同年5月25日から6月2日にかけて、千葉県千葉市の花見川団地にて、居住者を対象としたデモ走行が行われた。
その実証実験の結果をもとに、2024年1月30日には、これまでの車両サイズから車幅がおよそ半分に小型化された。
2024年2月4日から11日にかけて札幌で行われた「さっぽろ雪まつり」では、会場にこの車両が展示され、予約制によるテスト走行が実施された。