5Gから6Gへ。自動運転技術を支える通信技術の発展と、次世代通信実用化に向けた取り組み
自動運転技術において通信技術は、AIや高精度なHDマップと同様に欠かせない存在だ。
自動運転システムを構成するAIやセンサー、HDマップなどを最大限有効活用するには、高度な通信技術が必要不可欠となる。
今後の自動車の未来の方向性を示す「CASE(Connected, Autonomous, Shared & Service, Electrification)」においてもコネクテッドが含まれていることから、その重要性が窺える。
実際に現在、多くの自動運転車には、通信技術を活かした遠隔監視・操作システムを搭載されている。
無人走行が可能な自動運転車は、基本的にはドライバーの監視や操作を必要としないが、システムの不具合や天候の急変をはじめとしたさまざまな要因により、走行に支障が出る可能性も捨てきれない。
2018年に米自動運転車開発企業「Waymo(ウェイモ)」が運用を開始したことで知られる自動運転タクシーなどのサービスであれば、乗客に異変が起こった際などに対応する必要もある。
このようなケースに有効に働くのが、自動運転車の情報をリアルタイムで取得し、必要に応じて操作を可能とする遠隔監視システムや遠隔操作システムだ。
さらに、車載機同士の直接通信により、周囲の自動車の位置や速度情報に基づいた運転支援を行うV2Vにも欠かせない。これは自動車事故防止車間制御、交通の効率化などへの活用が期待されている技術だ。
このように、自動運転技術を様々な形で支える通信技術は、現在どのように発展を遂げているのだろうか。
目次
「高速・大容量」「低遅延」「多数同時接続」を実現した「5G」と今後の課題
「第5世代移動通信システム(5G)」は、日本国内で2020年3月から都市部を中心にサービスが開始したことで知られている。
自動運転ではなく、スマートフォンをはじめとしたモバイル端末で利用される通信規格としてご存じの方も多いのではないだろうか。
そんな5Gは、自動運転分野とも深く関わっている。そもそも自動運転車は膨大な量のデータを送受信し続けるため、高速大容量の通信システムが必須だ。さらに、リアルタイム処理が求められる場合も多く、システムは低遅延である必要もある。
高速・大容量、低遅延、多数同時接続の3つの特徴を持つ5Gが自動運転車に用いられるのはこれらの基準を満たすのが理由だ。
しかしながらメリットが多い反面、基地局がカバーする通信可能エリアは4Gと比べ狭い。そのため、安定した通信の確保が課題となる。
走行エリアが広域となる場合は、複数の基地局を跨いで通信を行うため、通信が不安定になる可能性があるのだ。自動運転システムに用いるとなるとトンネルをはじめとした通信状況が低下する場所も避けられない。
自動運転技術に用いる場合はスマートフォンなどとは異なり、通信が途切れたことによる危険も予測される。
今後は通信環境の安定性が一つの課題となるだろう。