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スズキが「ワゴンR CBG車」で挑むカーボンニュートラルへの挑戦。牛糞由来のバイオガスがインドのモビリティを変えるのか|JAPAN MOBILITY SHOW 2024

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スズキが「ワゴンR CBG車」で挑むカーボンニュートラルへの挑戦。牛糞由来のバイオガスがインドのモビリティを変えるのか|JAPAN MOBILITY SHOW 2024
国内向けのワゴンRよりも一回り大きい、 インド向けのワゴンR CNG車をベースとした「ワゴンR CBG」車。

カーボンニュートラルの実現に向けた新たな試みとして、スズキがインドで進めているのが、牛糞由来のバイオガスを用いた実証事業だ。そして、このバイオガスを使用するバイフューエル車「ワゴンR CBG車」が、JAPAN MOBILITY SHOW 2024で展示された。牛の糞尿から精製されたバイオガスを燃料とするこの車は、環境負荷軽減が大いに期待されている。このユニークな技術の開発背景や課題、そしてモビリティの未来を切り拓く可能性について、スズキ経営企画本部 コーポレート戦略部の大石部長に話を伺った。

TEXT&PHOTO :那須野明彦(Akihiko Nasuno)
主催:一般社団法人日本自動車工業会(JAMA)

ガソリン車、ディーゼル車に代わる、環境に優しい選択肢CBG車

スズキが展示した「ワゴンR CBG車」は、CBG(圧縮バイオメタンガス)を燃料とする小型車であり、インド向けに開発されたワゴンR CNG車(圧縮天然ガス車)を基にしている。使用する燃料のCBGは、牛の糞尿や生ごみなどから生成される。牛10頭分の一日の牛糞から、1台の車が1日走行できる分の燃料を生産できるという。

牛の糞尿には、CO2の約28倍もの温室効果を持つメタンが含まれており、現在、その大部分が大気中に放出されている。これが大きな環境問題となっている中、「牛糞から精製したCBGを自動車の燃料として使用することで、メタンの大気放出を抑制し、カーボンニュートラルに貢献することが可能だ」と大石氏は語る。また、牛が食べる牧草は光合成により大気中のCO2を取り込むため、牛の糞尿を原料として使えれば一石二鳥をいうわけだ。

インドではスズキ製CNG車からCBG車への置き換えを推進

「インドではすでに、多くのスズキ製CNG(圧縮天然ガス)車が普及しています。私たちは、これらCNG車のうち、約2割をCBG車に置き換えることができないかと、実証実験を現在インドで進めています」と大石氏は説明する。

インドには約3億頭の牛(日本は約400万頭ほど)が飼育されており、その糞尿から精製されるバイオガスのポテンシャルは非常に大きい。また、原油輸入依存度が高いインドにおいて、牛糞由来のバイオガスを新たなエネルギー源として活用できる可能性があると見ている。さらに、天候に左右されない牛糞バイオガスは、エネルギーの自立化にも寄与することが期待されている。

「こちらに展示しているワゴンR CBG車は、環境に配慮しつつ、ガソリンも使用できるバイフューエル車です。インド市場において、エコロジーで低コストなモビリティソリューションを提供できると私たちは考えています」と大石氏は力強く語ってくれた。

CBGの注入ノズルはこのようにガソリンのフューエルリッド内にある。今回が日本では初公開。想像以上にコンパクトだ。
トランク内のガスタンクとの接続は非常にシンプル。 これならコストをかけずにCBG車化ができるだろう。
CBGのタンクはこのようにトランクスペースに設置される。 ガソリンタンクはガソリン車と同様に車体の下側に設置されている。

牛糞由来バイオガスの課題と可能性とは

著者
那須野明彦

1970年東京生まれ。趣味はバイクとプラモ。自動車専門誌、モノ情報誌の編集者を経て、2008年にフリーのライター・編集者として独立。自動車専門誌ではカーグッズやカーナビ、オーディオなどのインプレ記事を数多く手がける。現在は企業のオウンドメディア、自動車コラム、カーグッズ紹介記事、DIY書籍、DIYのノウハウコンテンツなどを執筆。

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