林義正先生、「トルクと馬力」って何が違うんですか、教えてください。
「トルク」と「馬力」。毎日のようにエンジンのスペックと睨めっこをしているモーターファン・イラストレーテッド編集部でもその数字の大小以外は、知っているようでまったくわかっていない。物理の勉強をいちからやり直すのもなんだし、メーカーのエンジニアに正面切って取材をするのも気が引ける。そういえば、なにかにつけ「エンジンなんて馬力が出てればいいんです」と言い放つ御仁がいたっけ。そうだ、鎌倉に行こう!!
TEXT:三浦祥兒(MIURA Shoji)
*本記事は2016年12月に執筆したものです
目次
11月23日。祝日である。多忙な林先生に取材とは名ばかりの受講を申し込むと、この日だけしか空いていないという。是も非もない。高邁ではあるが、一方で技術者にとっては馬鹿馬鹿しい初歩の初歩を、お話ししていただけるだけでありがたいのである。しかし、編集担当のMZWも、編集長も、デスクの司令塔であるN女史も、休日だから他に用があって来られないという。世が世なら不敬罪だ。
「こんなタメになるハナシをするのに、あなただけとはねぇ......」
恐縮の上にも恐縮して身が縮む。特に女性をこよなく愛する林先生にとっては、折角の休日を野郎とふたりで過ごすのは大変ご不満のご様子とお見受けする。
「......で、トルクと馬力、ですか。いろいろと誤解があるようですねぇ。まぁ、ここでひとつハッキリさせておきましょう」
ダレかけた林宅の居間の空気が、急に引き締まった。林先生がその気になると、その言説は素人風情の手に負えるモノではない。以下は先生のお話の要約であり、文責は筆者にあることを御理解願いたい。
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