エンジンテクノロジー超基礎講座009|ミニスカートで超高回転を実現?:ピストンの首振りを抑制するスカート部
超高速で直線往復運動を繰り返すピストン。しかし接続するコンロッドはクランクへ円運動として伝えているため、ピストンはストローク内で大きく揺さぶられることになる。それを極小に抑えるための部位がスカートである。【モーターファン・イラストレーテッド Vol.136より転載】
ピストン頂部から側面に目を移せば、そこにはスカートと呼ばれる円筒形状の出っ張りがある。これはコンロッドの傾きによってピストンがピストンピンを中心に首を振ってボア壁面に衝突するピストンスラップを防止するのが目的。
シリンダーボアに当たると擦れて抵抗になり壁面を傷つけるおそれがあるため、スカートにはモリブデンコーティングや接触面積を減らすディンプル加工が施される。場合によってはDLC処理をする場合もあるが、オイルが介在することから基本的には不要だという。
レーシングエンジンではピストンスラップが原因の音の発生などは問題にならないため、ひたすら軽くするために超「ミニスカート」である。逆に超「ロングスカート」なのは2ストロークエンジン。2ストロークはシリンダー壁面に穿たれたポートから吸気と排気を行ない、ピストンの上下動で吸気タイミングを制御することから、スカートに一定以上の長さがなければエンジンが動かないのだ。吸排気ポートはボア円周上に複数空いているため、長いスカートもピンと平行な側だけでなく、ぐるりと一周に及んでいる。