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電動車ならではの勘所を探る|バイポーラ電極式バッテリーのインパクト

エネルギー密度を著しく高めた革新的技術

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電動車ならではの勘所を探る|バイポーラ電極式バッテリーのインパクト

バッテリー性能向上のカギを握るのは材料技術である、と一般には思われているのではないか。実際EVは、鉛電池がニッケル水素電池へ、さらにはリチウムイオン電池に進化したからこそ、まともな商品になった。ところがトヨタは、ニッケル水素電池の単セル出力を1.5倍に高めた“バイポーラ型”という構造を実用化。高出力化の原理と、量産化を実現したキー技術について解説する。

TEXT:安藤 眞(Makoto ANDO)
PHOTO&FIGURE:TOYOTA/Motor Fan

 
 化学反応を利用して電流を取り出すバッテリーは、一般に一対の正負極材と、その間でイオンのやりとりをする電解質で、ひとつのセルが構成されている。セルには電流を取り出す端子が付いており、複数で使用する場合、端子同士を繋ぐ必要がある。しかし、電気抵抗は距離に比例し、断面積に反比例するという性質があるから、薄い集電体を長手方向に流れ、断面積の小さい端子で接続する構造では抵抗が大きい。


 直列接続の場合、隣り合ったセルの正極と負極を接続するのだから、いっそ集電体の裏表に正負極の活物質を塗布してしまえば、集電体の面積がそのまま導電体として使えるし、電子は厚み方向に流れるため、抵抗は劇的に小さくなる。オームの法則【E=IR】に従えば、電圧Eが同じ(正負極材の電位差で決まる)なら、抵抗Rが小さいほど電流Iは大きくなる理屈で、大きな電流が取り出せるようになる。しかも、セルごとの筐体が不要になるぶん、単セル当たりの厚さが薄くでき、同じスペースに多くのセルを搭載することができる。


 それを実現する構造がバイポーラ(双極)電極で、アイデアそのものは以前からあった。実用化を阻害していたのは、電解液の存在である。

バイポーラ電極式ニッケル水素バッテリー

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