軽量化の特効薬、樹脂化に立ちはだかる数々の難問
八千代工業の樹脂製バックドア
バックドアという大きな部品を樹脂に置換すれば大きな軽量化が果たせるのは理解できる。
しかしそれを実現しているクルマは少ない。コストだけではない理由があるはず。
実際に樹脂製バックドアを設計生産した設計者諸氏に、その難しさをうかがった。
TEXT&PHOTO:三浦祥兒(Shoji MIURA)
八千代工業はサプライヤーでありながら完成車の生産も受託していた希有な企業である。しかし完成車生産はホンダに移管され、自動車部品サプライヤーとして、クルマの進化を見据えた新たな事業の柱を創出する必要があった。そこで燃料タンクやバンパーといった樹脂部品の製造技術を生かして、ボディの外板部品を樹脂で一貫生産することを計画。2009年の東京モーターショーで樹脂製バックドアの試作品を出品した。これは単なるケーススタディではなく、2025年に登場する市販車への採用を見込んだきわめて実現性の高い企画であり、実際に本格生産へ向けての準備が始まっている製品だ。
従来の鋼板プレスから樹脂に材料置換をする目的は当然軽量化。同時に鋼板では不可能だった複雑な造形が可能になることでデザインの自由度が増し、クルマの商品性を高めることもできる。
試作段階でのバックドアは鋼板製に比べて約40%の軽量化を実現している。これはウインドウにガラスを採用した場合で、透明部分も樹脂化すれば40%を超える大幅な軽量化が実現するというが、樹脂ガラスの採用を含め製品化に向けては、まだ解決しなければならない課題が山積みのようなのだ。