ボッシュが自動車関連事業を再編
ボッシュは自動車関連事業部を再編成することを発表した。顧客ニーズに迅速に対応することを目的としたもので、新体制後のモビリティ関連だけで2029年までに全世界で800億ユーロの売上を目標に掲げる。
ボッシュは、自動車関連事業の再編を行うことを発表した。ロバート・ボッシュGmbH内に、事業責任を負う新体制「ボッシュ モビリティ」が発足し"事業セクター"として運営されるという。これは、テクノロジーとソリューションをワンストップで提供することで、顧客ニーズに迅速かつ的確に対応することが狙いだ。ボッシュ モビリティは世界66カ国にある300以上の拠点に約23万人の従業員を擁し、発足する4つの事業セクターの中で最大規模となる。2029年までに800億ユーロの売上を目標に掲げている。
2020年代後半に予想されるSDVの波
売上目標達成に向けた成長の柱の1つは自動車用ソフトウェアだ。この市場は「ソフトウェア定義型車両(SDV)」の普及に後押しされ、2030年までに、2020年の3倍にあたる2,000億ユーロを大幅に超える可能性があるという。自動車業界全体がソフトウェア開発に入れており、開発コスト全体に占めるソフトウェアの割合は2030年までに約30%になると見込まれている。ボッシュのモビリティ関連では、研究開発に携わる全従業員の50%が既にソフトウェアエンジニアだという。
SDVには、2つの利点がある。第一は開発スピードへの貢献。既存システムに新機能を実装するために、何年もの時間をかける必要がなくなる。将来的には、数日で済むだろうと予想されている。二番目の利点は、ソフトとハードの開発が分離できることだという。ソフトのアップデートを行うことで、クルマのユーザーは愛車が今よりも長く新車のように感じられるだろう。ボッシュは2025年以降、SDVが大規模に導入されると予想しているという。
今後、クルマに実装されるソフトウェア アプリケーションは3倍に増え、クラウドにアクセスするアプリケーションは10倍に増加すると同社は予想している。
自動車開発の新しいトレンドを組織に反映
ボッシュが進める自動車関連部門の再編と連携強化は、自動車開発におけるトレンドに合ったものだという。例えば、迅速かつ正確に車両を安定させるビークルモーションマネジメント(車両挙動制御)では、ブレーキシステムに加えて電動パワートレインや電動ステアリングシステムにも制御が介入する。これにより停止距離が短縮され、ドライバー操作の修正が大幅に減少して安全性が高まる。
そのための技術的なベースが、最新のブレーキコントロールシステムである次世代横滑り防止装置(ESC)と、そのソフトウェア機能であるビークルダイナミクスコントロール2.0だ。ビークル ダイナミクス コントロール2.0は、ESCのコントロールユニットの一部である必要はなく、セントラルビークルコンピューターに統合することができる。将来的には、独立したソフトウェアパッケージとして利用できるようになるとボッシュは説明する。こうした複数の部門を統合して進める製品・技術開発が、組織の再編でさらに効率化されるということだろう。
ハードウェアとソフトウェア両面に精通
最新のプレミアムクラスの車両には、100を超えるコントロールユニットが搭載されている。コンパクトクラスの車両でも、30~50個のコントロールユニットを備えている。
将来、コックピット内やネットワーク化機能、運転支援システムや自動運転、パワートレインなど、さまざまな領域で高性能なコンピューターを使用することになるだろう。ボッシュは、クラウドからセントラルビークルコンピューター、個々のコントロールユニットに至るまで、車両全体の統一されたITアーキテクチャを開発中だという。統合されたアーキテクチャーによって、コントロールユニットの数を大幅に削減することが可能になるだろう。
同社の強みのひとつは、ソフトウェアとハードウェアの領域に同じように精通していることだろう。ブレーキやステアリングシステムに加え、燃料電池、バッテリー、環境に優しいパワートレインなど、最新の主要コンポーネントを一貫体制で開発・製造している。そのほか、多様なソフトウェアの開発や、自動車業界とIT業界のコラボレーションによるソフトウェアの統合という新たな分野でも専門性を発揮している。
7つの事業セクター
事業セクターは7つの事業部で構成される:
・エレクトリファイド モーション事業部:eAxleからシートアジャスターまで、電気モーターに関連するすべてに関与
・ビークル モーション事業部:ABSやESCからステアリングまでのビークルダイナミクスを扱う
・パワー ソリューション事業部:内燃機関、燃料電池、電解槽、水素エンジンを担当
・クロスドメイン コンピューティング ソリューション事業部:自動パーキングから自動運転まで、さまざまな分野のソリューションを開発
・モビリティ エレクトロニクス事業部:コントロールユニットの開発と半導体の内製化を推進
・モビリティ アフターマーケット事業部:スペアパーツとボッシュ・ カー・サービスのフランチャイズ展開を担う
・電動自転車システム事業部:ドライブユニット、充電式バッテリー、ABS、ネットワーク化されたディスプレイを含むeBike用のシステムソリューションを提供
さらに、ボッシュの子会社であるETASは、オペレーティングシステムとエンジニアリングツール用のハードウェアに依存しないソフトウェアに関して、水平的な責任を負うことになるという。